“持続可能な島”を創造するプロジェクトを展開

 私が訪れたのは1997年のこと。たくさんの人と会い、会話を交わしました。

 マクタン島から出迎えてくれたチャールズ・ブロンソン似のルーミンさん、美味しいココナッツ入りパンを焼くパッシンおばさん、“カオハガン・キルト”というパッチワークが得意なクララさん、笑顔がキュートなエレナちゃんなどなど。みんな、元気でしょうか?

 夜にはポントグの小屋で、数人の島民たちとバケツで混ぜたラムコークをココナッツの殻のお椀ですくって飲みながら、ギター演奏で地元の歌を聴かせてもらったり。みんな、陽気で、屈託のない笑顔。

客室はロッジ7棟、しっかりした造りのコテージ1棟、食事をする母屋にマスタールームが1室。

 宿はエアコンもないシンプルな高床式ロッジでしたが、ハンモックに揺られて風を受け、夜は小さなランプで過ごし、タオルやシーツなどは洗いたて。無駄をそぎ落としつつ、大切な本質が守られた、気持ちの良さがありました。夜中に窓から飛びこんできた犬が、寝息を立てて眠ってしまったのには、出て行ってもらうのに少々てこずったこともありましたが……(現在はロッジ周りには柵があるようです)。

素朴な味わいのカオハガン・キルトの人気も定着。新しい世代が新しいカオハガン島を担っているもよう。
カオハガン島からは、高層ビルが立ち並ぶセブ本島を望めます。肉眼で確認できるのに、この2つの島の間には時空を超えた距離感を感じてしまいます。

 あれから年月は過ぎ、人口は2013年時点で630人に。あの時のはじけるほど元気な子供たちの中には、設立された奨学金制度で進学し、先生や保健師のようなミド・ワイフ、カオハガン・ハウスのホテルスタッフになったり、島の南側の海域の“カオハガン島熱帯珊瑚礁保護区”で保護に勤しんだり、みんな島のために尽力しているもよう。次の世代が島を盛りたてているようです。

 今では年間約300人のゲストが訪れ、リピーターが約6割を占めているそう。そしてカオハガン島は現在“持続可能な島”を創造するためのプロジェクト「カオハガン2050」を展開中。カオハガン・ハウスから生まれた利益は、100%この計画に使われているそうです。

カオハガン島
●アクセス セブ州マクタン島からバンカーボートで約1時間
●おすすめステイ先 カオハガン・ハウス
URL http://www.caohagan.com/

古関千恵子 (こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/5世紀あまり。世界各国のビーチを紹介する「世界のビーチガイド」で、日々ニュースを発信中。
「世界のビーチガイド」 http://www.world-beach-guide.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2015.05.09(土)
文=古関千恵子
写真=カオハガン島