東京に先駆けて行われたナントの公演も大フィーバー

 各国に先駆け、2015年1月に本家のフランス・ナントで開催された「ラ・フォル・ジュルネ」の、今年のチケット販売数は15万4000枚。なんと、今年は来場者の6割がクラシックコンサートのビギナーだったという。大規模というだけでなく、クラシックファン以外の人々をも熱狂させるのは、このイベントの大きな特徴だ。

会場は2つ。メインとなる「シテ・デ・コングレ(ナント国際会議場)」(左)のほか、旧ビスケット工場を改築した雰囲気ある建物(右)でもコンサートが行われる。

 クラシックのフェスティバルでありながら、幅広く音楽好きを魅了する一番の理由は、ジャンルを超えたアーティストの顔ぶれ。ステージは、世界を舞台に活躍するオーケストラに加え、パーカッションのバンドあり、サキソフォンのグループあり、ピアノトリオあり、ポルトガル民謡のファドをアレンジした音楽あり……と多彩。

日本公演にも出演が決定したアントニオ・ザンブージョ。ポルトガル民謡のファドをアレンジした音楽で人気に。
スティールバンドの大御所、レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラ。演奏後は拍手が鳴りやまず、スタンディングオベーションに。

 一流の演奏が聴けるコンサートのチケットが平均価格13.6ユーロ(約1,800円)というリーズナブルな価格設定も、人気の秘密だ。一般的に、クラシックのコンサートというと「正装していかなくちゃ」という、ちょっと堅苦しいイメージもある。でも、「ラ・フォル・ジュルネ」にはドレスコードも、難しいルールもなし。とにかく、音楽を楽しめばいい。音楽を感じればいい。そんな千客万来の敷居の低さも、このフェスティバルの魅力なのだ。

有料公演のチケットさえあれば、誰でも楽しめるオープンスペースのコンサート。ベビーカーを押すファミリーからおばあちゃん、おじいちゃんまで、観客の顔ぶれはさまざま。

 朝から晩までいくつものプログラムが公演されているので、もちろん、希望するコンサートとコンサートの間には、待ち時間もできる。そんなときは、バーでワインを飲んだり、カフェでお茶したり。その目の前を、先ほどまでステージに立っていたアーティストが楽器を持って通り過ぎる、ということもしばしば。

会場の中にあるレストラン&バー。コンサートの合間にワインを飲んだり食事したり。同じフロアにはアートや本を売る即席の売店も。音楽と音楽の合間にも楽しみがある。

 そんな「ラ・フォル・ジュルネ」の、2015年のテーマはズバリ、「PASSIONS(パシオン)」。例年以上に自由で冒険に満ちた内容で、東京に上陸する。

2015.04.08(水)
文・撮影=芹澤和美