金色に輝くだし巻き卵、そして土鍋仕立ての鴨汁そば

 クリームチーズの味噌漬けとさつま揚げをいただきつつ後半戦を心待ちにしていると、「お時間少々かかります」と言われていただし巻き卵が登場! 夕日に照らされた小麦畑かなにかのように、美しい黄色が広がっている。だし巻き卵には“だし前面”のうっすら塩味系と、甘い系があって、好みも分かれるところだが、こちらのお店のものは結構しっかりと甘い。もちろん、大好き! おそばにはこういう卵焼きが合うと思う。うっかりお酒も進んでしまいます。

だし巻き卵。メニューに「甘いですよ」というひと言が。それにしてもキレイ。

 さてさて、主役のおそば。初めての一枚は、「鴨汁せいろ」にした。そもそも好物だが、寒くなってくると鴨がおいしい。ので、ついついド定番のせいろなどではなく、鴨汁に♪ 現れたのは、小さな土鍋に温められた鴨汁。つゆの中に、煮ても縮まなかったと思われる立派な鴨肉、そしてお団子。ねぎは小鍋の中で煮えているもの+別添で白い部分の小口切りが出てくる。お麩も入っていて、鴨ミックスなつゆを優しく含んでいた。

鴨汁とおそば。盛りもいい! 1,500円は大変お値打ちだと思われる。

 冷たいそば×あったかいつゆ、という世界はタイミングがずれると悲惨な展開になるが、土鍋に入れていることでつゆが冷めにくく、お肉もふっくら。おそばを語り上げるほどそば人生は長くないけれど、そば粉率が高いのにポソつくこともブツブツと切れることもない。なんともしなやかで、風味のいいそばであった。

 とろりとしたそば湯も当然おいしく、体は温まり、相変わらず静かな店内でほっこり。メニューに天ぷらがないのもなんだか潔く、デザートは数種あって、でもおしゃれ系そば居酒屋ではなくしっかりと古式ゆかしいそば屋。

 近所においしいそば屋があるのはとても幸せなことである。今度はちゃんと電話をしてから行こう。ダンボールを全部開く前にまた出掛けてしまいそう……。

紫仙庵
所在地 東京都目黒区下目黒6-6-3
電話番号 03-3712-8555
[2014年11月訪問]

北條芽以(ほうじょう めい)
神奈川県鎌倉市生まれ。情報誌編集者を経てフリーライター、料理本の編纂を行う。好きなのは炭水化物(特にごはん)とお肉の組み合わせ。お酒はあまり飲めない。「左手にごはん茶碗を!」

Column

北條芽以のLOVEレストラン

美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!

2014.12.24(水)
文・撮影=北條芽以