百恵カバー曲の重さはどこからくるのか
MCは終始和やかで、気づかいの人であることがにじみ出ていた。父君・三浦友和さんがインスタを楽しんでいること。いかりライクスホールのシャンデリアがブロッコリーシャンデリアと言われていること。いかりの食事はとてもおいしいということ。百恵さんの歌を大切に歌い継ぎたいということを語っていた。
このライブから数日後、「徹子の部屋」に出演し、こちらでも百恵さんの歌をカバーすることについて「プレッシャーより感謝が多い」と話しておられたが、生で聴いた感想はもっと複雑な感情があるのだろう、と思った。聴いているこちらが想像する何百倍ものプレッシャーと感謝に加え、覚悟とか罪悪感とか思い出とかがまぜこぜになり、上からギューッとすさまじい圧をかけているような、ヘビーな聴きごたえがある。なのに解放的なのである。プレスされ、ブシュッと濃厚なジュースが染み出てくるイメージだ。エネルギーの放出!
だからこそ彼の歌う百恵さんのカバーは、面倒くさくて愛しいのだろう。
ライブが終わり、雨はまだ降っていたけれど、私は大満足で傘を差した。彼の歌声はやっぱり雨と合う。涙に近い湿気とハレーションをふくみ、心に虹がかかる。
行きと同じ駅までの風景に、新たな彩りを感じた。
また絶対観に行きたい。その時はタオルを買うぞ!
Column
田中稲の勝手に再ブーム
80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

