同じ歌でも、歌う人が変われば、違う世界が広がる――。そんな、パラレルワールドに迷い込んだような興奮を覚えるカバーソングが好きだ。なかでも、山口百恵さんの歌を歌い継いでいる三浦祐太朗さんの歌はいい! 親子なので声は似ている。胸に熱いものを秘めた、凛とした声である。ところがなぜか祐太朗氏の歌から見えてくるのは、泣き虫で情緒不安定なヒロインなのだ。面倒な男に引っ掛かりそう! まぎれもなく我が軍。聴くたびに共感して暴れそうになる。
オリジナルの失恋ソングもすごく寂しげで、いつかライブに行きたいとは思っていた。が、CD音源ですら「胸が痛い胸が痛い!」と叫びながら聴いているのに、生で聴いたらどうなるのだろう。ライブ会場を転げまわってしまうのではなかろうか。
そうして延ばし延ばしにしていたが、ついにチケットを購入。10月25日、待ちに待ったその日がやってきた。レッツゴー、いかりライクスホール!
「すがりビブラート」のファンに
当日は雨。私は会場の最寄り駅、阪急塚口駅で折り畳み傘を片手に「おーほほほ、想定内よ!」と高らかに笑った。なぜなら私は雨女。楽しみにしているイベントの7割が雨。さらに三浦祐太朗さんには雨が似合ーうッ! 百恵さんのカバーでの未練たらたら乙女の歌声(褒めています)、オリジナル曲での湿気を含んだ等身大のやさしい歌声。どちらもレイニーデイが似合ーうッ!
早く着きすぎて、駅前のマクドにてポテトを頬張りながらどの楽曲を歌うか予想する。オリジナル「ハタラクワタシヘ」と百恵さんのカバー「絶体絶命」「謝肉祭」は必ずやってほしい。
思い起こせば2017年、三浦祐太朗さんが百恵さん楽曲をカバーするというニュースを聞いた時「およしなさい!」と叫び、聴いたとたん「もっとおやりなさい!」と意見がコロッと変わったっけ(遠い目)。彼のしゃくりあげるようなビブラートは、恋人に、もしくは思い出にさえ追いすがり泣くヒロインを思わせる。今やこの「すがりビブラート」が聴きたくて、三浦祐太朗さんに歌ってほしい歌を探しに、山口百恵さんを聴き直すという逆ルートをたどっているほどだ。
また「好きなアニメの女性キャラを“嫁”と呼び、シリーズごとにお嫁さんを変えている」というオタクっぷりを、インタビュー記事で披露されており、なんと正直な人なのかと感動したものだ。
