長い年月にわたる、ふたりの女性の激しくも純粋な愛のかたち――。
ともに女性同士の関係性を描いた大作長編を発表した、綿矢りささんと一穂ミチさん。
各々の作品のことから創作の話まで、初めての対談をお送りします。(全3回)
綿矢りさの主人公は「おもしれー女」の頂点!?
一穂: 私は綿矢さんの小説が好きで、一読者だったとき特に刺さったのが3作目の『夢を与える』だったんです。SNS時代を予見したような内容ですよね。美しくも空っぽな女の子がネットで炎上し、傷つけられる。今の若い人が読むと、よりリアルに感じられるように思います。
綿矢: ありがとうございます、嬉しいです。
一穂: 私にとって、綿矢さんの小説の主人公はネットでミーム化している「おもしれー女」の頂点にいるイメージなんです(笑)。彼女たち、いつもとんでもないことをしますよね。
綿矢: そうですね(笑)。少し常軌を逸した行動をしているように見えることが多いかもしれません。

一穂: 『激しく煌めく短い命』の久乃もそうですが、綿矢さんの描く女性は、外から見ると大人しくて自己主張しない、男性から見れば「ちょろい」と思われがちなタイプが多いけれど、内面には独特なユーモアや考え方があって、それらが「溜めて、溜めて……」というのではく、不意に爆発する。
綿矢: 書いているあいだは、彼女たちが何かに我慢していることはわかるのですが、それが何に対してなのかはわからないことが多いんです。だから「ここで暴走したらまずいよ!」と私が思っていても、キャラクターが勝手に暴走してしまったり、予想外のところで爆発したり……。
一穂: 読んでいると、そういう予兆が見えるときがありますよね。「そろそろこいつ、何かやらかしそうだぞ」と(笑)。普通のフィクションだったら「やめておけ!」と思うところ、綿矢さんの小説の場合は「早くやらかしてくれないかな」と、その先が読みたくなるんです。
綿矢: やりすぎかなと思って暴走する場面を削ったこともあったのですが、編集者から「狂気の部分は残した方がいい」というアドバイスを何度かいただいて、あえて残すようになりました。