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 「アンダーズ 東京」のホリデーシーズンは、シェフパティシエ ノルマン・ジュビン氏が手がける、記憶に残る洗練されたクリスマスケーキが登場。フランスとスイスにルーツを持ち、日本の美意識を深く理解するシェフが生み出すケーキは、「デザートではなく、思い出を作る」ことをテーマにした、アートのような逸品ばかりです。

 大切な人と過ごすこの季節、目にも舌にも記憶にも残るクリスマススイーツで、特別なひとときを彩ってみてはいかがでしょう。


伝統工芸の美が宿るアートなケーキ

 日本の伝統工芸「組子細工」の意匠を取り入れたブッシュ ド ノエルは、アンダーズ 東京のレセプションエリアを彩る文様をモチーフにしています。

 カカオ分40%のミルクチョコレートムースには、ほんのりと白味噌を忍ばせ、奥行きのある旨味を加えて。隠し味に使われたマレーシアのこしょう「サラワクペッパー」のジュレも後味に清々しい余韻を残し、レモンマーマレードには柚子胡椒を加えることで、上品な辛味と和の柑橘らしいアクセントを添えています。口に含んだ瞬間チョコレートのまろやかさの中に、ふっと感じる和のニュアンスが、どこか落ち着く味わいです。

 ベースとなるチョコレートクランチには、カカオニブやライスパフ、フィヤンティーヌ、ヘーゼルナッツプラリネを重ね、さまざまな食感を織り込んでいます。

 不要な要素をそぎ落とし、必要なものだけを丁寧に重ねていく。そんなシェフ ノルマン・ジュビン氏の哲学が息づく、五感に響くクリスマスケーキです。

燻製バニラと柑橘が香る軽やかなケーキ

 燻製によって香りを引き出したマダガスカル産バニラを主役に、柑橘系フルーツとの相性を追求した、やさしい味わいのムースケーキです。

 なめらかに仕上げたバニラクリームやスポンジ、ガナッシュモンテ、バニラのジュレを重ね、奥行きのある香りと風味を表現。

 中に忍ばせたみかんのコンポートには、プチプチと弾ける食感が楽しいフィンガーライムを加え、ジューシーで印象的なアクセントになっています。

 仕上げは、バニラビーンズを贅沢に練りこんだムースで全体をやさしく包み込み、トップにはグレープフルーツのほろ苦さと、みずみずしいオレンジの爽やかさを添えて。

 バニラの持つ上品な香りと、柑橘の澄んだ果実感。重たさを感じさせない、デザートのようなクリスマスケーキです。

2025.09.28(日)
文=下井美奈子