『プルースト効果の実験と結果』で鮮烈なデビューを飾り、青春/恋愛小説界にその名を轟かせた佐々木愛さん。最新作『じゃないほうの歌いかた』が、2025年8月27日に発売になりました。
デビュー作の表題作は杉江松恋氏に「2018年恋愛小説短篇のベスト」と評され、第二作『料理なんて愛なんて』は第1回本屋が選ぶ恋愛小説大賞にノミネートされるなど、令和で最も注目されている恋愛小説家です。
最新作の舞台は、落合南長崎にある独立系カラオケ店「BIG NECO」。うだつのあがらない凡人たちの、人生の奇跡ときらめきを描く連作集です。一度読んだら忘れられない、佐々木愛さんの唯一無二の筆致をいち早く堪能していただいた、書店員のみなさまからの感想をご紹介します!
紀伊國屋書店ゆめタウン広島店 藤井美樹さん
じゃない方。名前まず覚えてもらえない。存在感が薄いので途中で消えても気づかれない。でも私たち、ちゃんと生きてるから! カラオケから漏れでる歌声は魂が削れてる音かもしんない。
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精文館書店中島新町店 久田かおりさん
1章目を読んだところで「あ、これ好きかも」という予感が生まれ、2章目を読んだときにその予感が確信に変わった。
ひとつずつ好きが重なって最終章で好き爆弾がさく裂した。しかも派手な爆弾じゃない方の感じ。凡人がこれでもかって登場する。次々現れる凡人が、普通の生活を送る、しかもみんなツイてないし恵まれてもいない。そんな普通の毎日の中で同じカラオケ店にやってくる面々。重ならないはずの普通が小さな輪を描く。あぁ、普通のお話なのになんでこんなに好きなんだろう。
タイトルも好きだ。「じゃないほう」というちょっと投げやりな言い方の中に愛を見つけちゃう。なんでもない毎日が愛おしくなる。そして、カラオケ店で誰かと一緒に歌いたくなる。大声で、酸欠になりながら。
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HMV&BOOKS OKINAWA 中目太郎さん
「ルサンチウーマン」という造語を思い出した。むくわれないと分かりきっている人生を、それでも生きていく。その悲しさと寂しさが詰まっていて、読んでいてたまらなくなってくる。でもどこかに必ず軽さが用意されていて、深刻になりすぎない生き方を垣間見せてくれる。
2025.09.21(日)