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くまざわ書店西新井店 塩里依子さん
うまくいかないことが積み重なって人生が空回っているような虚しさを感じるようなときでも、前を向きたいともがく登場人物たちが愛おしかった。もっといい自分になりたい、大切な誰かに幸せでいてほしい、そんなささやかでまっとうな彼らの願いが、くすんだ毎日の中でも失われずに輝いていて、彼らの心がどうか報われますようにと願いながら読んだ。
普段の会話の中では出ないような明るい言葉や未来への祈りも、歌でなら全力で叫ぶことができる。小さなカラオケ店の個室で鳴り響いたその思いがわたしの心にも優しく沁みて、無性にカラオケに行きたくなった。
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興文堂書店 i-CITY店 名和真理子さん
初めて読むのに何だか懐かしさを感じて、少しほろ苦さもあって、とってもよかったです。
特に、1話目の「池田の走馬灯はださい」がすきです。胸の奥の忘れていた思いをぎゅっと掴まれました。
90年台は特に音楽が盛り上がってて、カラオケにもよく行ったけど、音痴で上手くみんなの雰囲気に乗り切れない私は、いつも隅の方で、リズムに乗り切れない手拍子しながら、順番回ってこないように、でも楽しいふりをしていたのを思い出しました。カラオケが苦手だったので、かってに池田さんに自分を重ねて読んでしまいました。
東京にやっと池田さんの居場所が見つかりそうでよかったです。
どの物語も気がつくと、すっと体に染み込んできて胸がいっぱいになりました。
久しぶりにカラオケ、行ってみたいなと思いました。


じゃないほうの歌いかた
定価 1,980円(税込)
文藝春秋
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2025.09.21(日)