「イェーイ」コンプレックスなしの思春期
――写真を撮られるのが嫌だったとか、そういうコンプレックスを抱かずにすんだ?
あやか 普通に「イェーイ」って(笑)。むしろプリクラめっちゃ撮りたい、みたいな。思春期の時もコンプレックスとかは全然なかったんです。

ただ、ギャルにずっと憧れていたので、化粧がうまくできないことは嫌でした。それが今している“おしゃれ眼帯”につながっていくんですけど。
――ちなみに、さっき見せてくれた写真に一緒に写っていたのはお兄さんですか?
あやか あ、そうです。
――兄妹ゲンカの時に気を遣われるとかは?
あやか それも全然なかったです。さすがに殴り合いのケンカになると、母が「顔だけはやめなさい!」って言ってたかな(笑)。

――治療がはじまったのはいつから?
あやか 保育園か小学校の時に医大の形成外科で診てもらったんですけど、「骨の成長が止まらないと手術できない」と言われて、中2の時にやっと今の主治医に出会って、治療が始まりました。
その後、中3のときにはじめて手術をしたんですけど、それが本当にしんどくて、病みましたね。
顔面の骨を1日0.25mmずつ伸ばすための手術
――それはどういった手術だったんですか?
あやか 簡単に言うと、成長していない左顔面の骨を伸ばして前に出す手術と、上の方が垂れ下がっていた左耳も一緒に治すものでした。
――「左顔面の骨を伸ばして前に出す」というのは、具体的にどうやるんですか?
あやか まず、手術で両頬を繋ぐものと、左側の顎に沿うかたちでそれぞれ棒状の金具を顔に挿して。で、術後に、その棒に付いているボルトを毎日毎日、スパナ風の工具で1日0.25mmずつ伸ばしてくんです。
――聞いているだけでも痛そうですが、やり方はかなり原始的といいますか。
あやか 要は、毎日グイグイ引っ張って前に出していくってことなんで、かなりアナログですよね。見た目に反して意外と痛みはなくて、スパナなどの道具でギリギリ伸ばす時に骨に響くくらいでした。
手術そのものより、術前に上顎と下顎を固定しなきゃいけないってことで、歯茎に何ヶ所も針金ぶっ刺して口を縛る処置があったんですけど、それが本当に痛くて。見た目もエグかったです。
おかげで1ヶ月半、ずっと口を縛られているので食べられず、喋れなくなったことが一番しんどかったです。
――それは厳しいですね……。
あやか 喋っても口を瞑ったままでしか話せないので、普段通りに会話ができないことでストレスがたまりすぎて。入院は1ヶ月半ほどだったんですけど、最後の方は「もう無理!」となって、先生にも「精神的にギリギリです」と相談したほどでした。
――一方で、術後に自分の顔が変わることに期待というか、喜びみたいな気持ちもあった?
あやか 良くなることはわかっていたので、術前はワクワクしていました。どうなるんだろうなって。でも現実は、顔はパンパンに腫れてるし針金も入ってるしで、全然よくわからない(笑)。それでも、前よりは良くなったんだろうって思わないとやっていけないくらい、「痛い」「しんどい」しか考えられなかったですね。
2025.09.04(木)
文=小泉なつみ