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ズーラシアのフランソワルトンは、目がくりくり、顔がまるい!

 「フランソワルトンの魅力をもっと広く広めていくために、さらに情報発信をがんばっていきたい」と話す桒原さんに、おすすめの観察ポイントを教えていただきました。

「フランソワルトンの成獣は全身が真っ黒なので撮影が難しいらしく、なかなか写真を撮っていただけなかったりもするのですが、よく観察するとそれぞれすごく表情豊かですし、お客さまのこともよく見ているので注目していただけたらうれしいです。

 また、群れで生活をする動物で、群れの中でのコミュニケーションの取り方などは単独で飼育しているサルでは見られない行動もあるので、じっくりと観察してもらいたいですね」

 個人的な感想ですが、ズーラシアで暮らすフランソワルトンは顔が丸く、目がくりくりとかわいらしい印象があります。そのことを、桒原さんに伝えると「そうなんです、かわいいですよね」と大きくうなづいてくれました。

「系統なのでしょうが、ズーラシアにいるフランソワルトンは成獣でもかわいらしい顔をした個体が多いんです。赤ちゃんはより目がくりくりとしてかわいらしいですし、オレンジ色もすごく珍しく、一度見ると興味を持っていただけることが多い印象です。赤ちゃんのオレンジ色は3ヶ月くらいからどんどん黒に移り変わっていくのですが、そういった過程もその瞬間しか見られない貴重なものです。すくすくと成長するミントとダイダイを観に来ていただきたいですね。

 気温が35度くらいの暑い中でもみんな元気に動き回っていますし、成獣は暑そうにする姿も見られていないので、フランソワルトンは暑さに強いと思います。ですが、赤ちゃんや幼い子どもがどれくらいまで暑さに適応できるのか。正直わからないところではあるので、気をつけながらあまり無理をさせないように心がけたいですね」

 フランソワルトンも絶滅危惧種。ワシントン条約では、取引を規制しなければ絶滅の恐れのあるものと定められています。

「いちばんの問題は森林破壊。木が伐採されて生息域と餌がなくなってしまったことが影響しているのですが、フランソワルトンが伝統的な薬になると言い伝えられていることで密猟されて数が減っているという情報もあります。

 減少には人が関わっている部分も多いので、そういったものを買わない、手を出さないようにしていけたら。高く売れるから密猟者も減らないわけで、価値がないものとなってしまえば密猟しなくなっていくのではないでしょうか。

 森林破壊については、エコラベルのついているものを購入するなど、意識を変えることで守れるものはあると思います」

●お話を伺ったのは……

よこはま動物園ズーラシア フランソワルトン飼育担当
桒原暖佳さん

よこはま動物園ズーラシア

神奈川県横浜市旭区にある「生命の共生・自然との調和」をテーマに掲げた動物園。世界の気候帯・地域別に分けられた8つのゾーンには、それぞれその地に沿った植物が植えられており、野生の動物が暮らしているような環境を体験することができる。オカピやセスジキノボリカンガルー、テングザル、ドールなど希少な動物もたくさん飼育されているほか、人工授精によって国内で初めてツシマヤマネコの繁殖に成功するなど、種の保全にも積極的に取り組んでいる。

所在地 神奈川県横浜市旭区上白根町1175-1
電話番号 045-959-1000
営業時間 9:30~16:30
定休日 火曜
入園料 800円
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/

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2025.08.09(土)
文=高本亜紀
写真=松本輝一