
CREA WEBでは「猫」特集が今年も好評公開中です。今回は、猫に負けず劣らず愛らしいアザラシについてその魅力を徹底的に掘り下げます。
昨年夏、SNSで話題をさらった「アザラシ幼稚園」。一大ブームを巻き起こし、流行語大賞にもノミネートされるほどの盛り上がりは、いまなお冷めません。
「アザラシ幼稚園」とは、オランダのアザラシ保護施設「ピーテルブーレンアザラシセンター」のこと。その様子を映し出すライブ配信に、ひとりのXへの投稿をきっかけに日本人視聴者が殺到しました。
この「アザラシ幼稚園」や国内のアザラシ保護施設などを紹介した『アザラシまるごとBOOK』(辰巳出版)が昨年12月に発売に。予約の時点で完売したり、Amazon和書「総合1位」を獲得したりと、大ヒットを記録中。この本を手がけた辰巳出版の編集担当・小林裕子さんに、アザラシ人気の秘密を伺いました。

専門用語が生まれるほど人気になった「アザラシ幼稚園」

――昨年12月に発売した『アザラシまるごとBOOK』。発売から2カ月以上たった今でも話題沸騰中ですが、そもそもどうしてこの本を作ろうと思ったのでしょうか?
小林裕子さん(以下、小林) 最初のきっかけは、2024年8月、Xでバズっていた「ホカホカ通信さん」の投稿を知って、いち視聴者としてオランダのアザラシ保護施設「ピーテルブーレンアザラシセンター」のライブ配信を見始めたことです。そもそも私は『少年アシベ』世代なのでアザラシに憧れがあって、最初はアザラシたちがプールにぷかぷか浮いたり、じゃれあったりしている様子を羨望の眼差しで眺めていて(笑)。
――小林さんもライブ配信を楽しむ「茶道部員」の1人だったのですね。
小林 そうなんです。アザラシのかわいさはさることながら、「茶道部員」のように、日本の視聴者たちが生み出した専門用語が広がっていくのも面白くて。
アザラシが立ち泳ぎする様子は幸運のシンボル「茶柱」と呼ばれ、そこから「茶」つながりの用語がたくさん生まれいったんですよね。新人アザラシを「新茶」、アザラシ同士がじゃれ合う姿を「和茶和茶」「イ茶イ茶」と言ったりして。
私は早々についていけなくなりましたが(笑)、そういう日本らしいファンダム的な広がりも魅力に感じました。
――専門用語の誕生が「アザラシ幼稚園」の人気を拡張していったわけですね。
小林 それ以外にも、日本人ならではのアイドルの成長を見守っているような感覚があるのも、人気を加速させる要因になっていると思います。保護されたばかりのか弱い存在が、「アザラシ幼稚園」で暮らすことでどんどん元気を取り戻し、最後は“卒園”というイベントを迎える。
保護施設の「ピーテルブーレンアザラシセンター」は意図して物語を作っているわけではありませんが、そういうドラマ性が日本の視聴者を釘付けにした面もある気がします。
2025.03.06(木)
文=船橋麻貴
写真=『アザラシまるごとBOOK』(辰巳出版)