個性的なアザラシたちが「アザラシ幼稚園」に大集合!

小林 とくに盛り上がりを見せていたのは、2024年9月ごろ。大きいプールに10頭以上のアザラシがいて、最も賑わっている時期でした。
この頃は爆速背泳ぎをするシルバーチコ、おっとりとしたセルチェなど個性のあるアザラシたちが次々と登場し、日本の視聴者を沸かせていました。私が『アザラシまるごとBOOK』を作ることを決めたのも、ちょうどこの頃でしたね。
再会しないことがアザラシたちの幸せ

――『アザラシまるごとBOOK』を作る際に、大切にされたことは何でしょうか?
小林 よくよく考えてみると、アザラシは動物園や水族館にもいる馴染みのある動物なのに、種類も生態も全然知らなくて。オットセイやアシカとの違いもわからなかったですし。それでハシビロコウやマヌルネコなどニッチな動物の本づくりに長けているグラフィックデザイナー・写真家の南幅俊輔さんの力を借りて、学びがあるような1冊を目指しました。

小林 そして一番大切にしたかったのは、「ピーテルブーレンアザラシセンター」が行っている保護活動のことをしっかりと届けること。というのも私自身、最初は「かわいい」と思いながら「アザラシ幼稚園」のライブ配信を見ていましたが、「ピーテルブーレンアザラシセンター」のスタッフさんが保護活動のために動く姿に、次第に胸を打たれていったんです。それで施設の支援につながるような本を作ろうと考えました。
――実際、本の中では「ピーテルブーレンアザラシセンター」のスタッフさんのインタビューも行っていました。何か印象に残っていることはありますか?
小林 スタッフの皆さんは非常に明るく前向きな方々ばかりで、日本での盛り上がりも素直に喜んでくださっています。取材ややり取りを重ねて学びとなったのは、動物との向き合い方ですね。彼らは、動物は愛玩対象ではなく美しい存在として、自然とともにあるべきだと考え、そのために保護・管理することが人間の使命だと考えているようです。
茶道部員たちから「valoニキ」と呼ばれるスタッフのラファエルさんが日本人ファンとチャット欄で会話しているところを目にしたのですが、「卒園したアザラシにまた会いたいですか?」という質問に、「もう会わないのが彼らの幸せだ」と即答していたのが印象的で。アザラシを保護し、自然に帰すことを目的にしているとはいえ、自分だったらこう言えるのだろうかと考えさせられました。

2025.03.06(木)
文=船橋麻貴
写真=『アザラシまるごとBOOK』(辰巳出版)