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深夜に起こされて連れていかれたのは

「夜分にすみません。少し、来ていただきたいところがございまして。旦那様も奥様もお待ちです」
寝ぼけ眼をこすりながら見ると、声の主は宴会時からテキパキと給仕などを取り仕切っていた中年の番頭さんでした。
「夜分にすみません。少し、来ていただきたいところがございまして」
「こんな夜中に、ですか……」
「旦那様も奥様もお待ちですので」
その一言に事の大きさを察知したGさんは手早く身なりを整えると、まだ酒の残る体でヨロヨロと起き上がり、番頭さんの後について外に出ました。
外にはRさんの両親、そして帰ったと思っていた一部の親族が笑顔で待っていました。
「悪かったのう。びっくりしたじゃろ? まぁ、大したことやないんやけど、どうしても血のつながっとらん人に見てもらわなあかんのよ」
「あの、ちょっと状況が読めていなくて……」
「では、こちらにお願いします」
そう番頭さんが先導すると、親族一同は手慣れた様子でGさんをソッと取り囲み、ゾロゾロとどこかへ連れ出し始めたそうです。
2025.08.15(金)
文=むくろ幽介