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「うん…悪いけど1人で行ってもらえたら」

状況を説明してもらいたい一心だったGさんは、見知ったRさんの姿を周囲に探したそうですが、彼女の姿はどこにもありませんでした。
歩いていくと道の先に一筋の光が漏れていました。
「ここは物置小屋なんやけど、その奥に扉があるんよ。そこを、ちょっと覗いてきてもらいたいんよね」
瓦屋根の物置小屋の中には戸棚がいくつも並んでおり、ホコリ臭い木箱やら掃除道具やらが詰め込まれていました。
そして、古めかしい電球色の明かりに照らされた物置の奥に、お義父さんの言う通り一枚の金属製の扉がありました。
「この中に入ったらな、手掘りの細い階段があるけん、そこ通って地下室まで降りてもらいたいんよ」
「僕だけで、ですか?」
「うん……悪いけど1人で行ってもらえたら。ちょっと家のもんはここから先は入れんのよ。あとはこのSが説明するけん。ほんなら、よろしく頼むけんね」
お義父さんたちはそう言ってGさんの肩を叩くと、ゾロゾロと物置の外に出て行ってしまったのです。

禍話
2025.08.15(金)
文=むくろ幽介