この記事の連載

 生配信サービス「TwitCasting」で、2016年から続いている人気怪談語りチャンネル『禍話(まがばなし)』。北九州で書店員をしている語り手のかぁなっきさんと、彼の後輩であり映画ライターの聞き手・加藤よしきさんは、日常が歪むような実話怪談をこれまでに数千話発表し続けてきました。

 そんな禍話から今回は、平成初期にとある田舎町で小学生の少年が体験した、まるで白昼夢を見てしまったかのような恐ろしいお話をご紹介します――。

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山間から空に伸びる白い煙突

 子どもの時からずーっと心に焼き付いている……そんな景色をみなさんひとつは持っているのではないでしょうか。。

 平成時代の初期。当時小学4年生だったYさんにとってのそれは“煙突”でした。

 4階建ての小学校の窓から、青々とした山の背を突き抜けるように空にぬっと突き出るその煙突を、いつも退屈そうに眺めていたYさん。

 1年生の頃から何度席替えを繰り返しても窓際になり、角度は違えども左を向くといつも見えた煙突でしたが、煙が上っているのは一度も見たことがなく、目を凝らしても煙突の根元にある白い屋根の建物が木々の合間にかろうじて見えるだけ。正直言うと、本当に煙突なのか怪しいとすら思っていました。

「え~、なにこれ~?」

「また、校長先生の思いつきだよ~……」

「こらー、みんな静かに。今、プリント配りましたが、今年の夏休みは校長のアイデアで理科の授業に使うための虫捕りイベントをやることになりました。参加を希望する人はプリントの“出席する”のところに丸を書いて、来週の水曜日のホームルームまでに先生に提出してくださーい」

2025.08.14(木)
文=むくろ幽介