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山の奥へ踏み込んだ一行に起きたこと

 テンションの上がったYさんたちは、当初の予定よりもう少しだけ山の奥深くに足を運ぼうとTさんのお兄さんに頼み込んでみました。

「俺も、なんか、もっと奥に行きたいなって思っていたところなんだよね……」

  以外にもすんなりと降りた許可。一行はより大きな獲物を求めて、山の真ん中あたりまで山道を進んで行ったのです。

 その時にふと、Yさんの頭に窓から見ていた光景が浮かびました。

 ああ、そうだ。外から見るとちょうどこの辺りにあの煙突はあったよな――グループの後ろの方を歩いてYさんは、そんなことを考えながら一瞬立ち止まってあたりをキョロキョロと見渡し、あの“白い煙突”を探したそうですが見つからなかったそうです。

 あれほど大きい建物であれば、もっと目に入ってもいいはずなのに……段々と意地になり虫より煙突を見つけたいとまで思い始めていた頃、周りに誰もいなくなっているのに気がつきました。

「あ……あれ? やば、みんなどこいった?」

 さわさわと風に揺れる葉っぱと隙間から見える青空。

 さっきまで穏やかだった山の静けさが、急に恐ろしいものに感じられました。

 その時、坂道の上からTさんたちの叫び声が聞こえてきたのです。

(後編に続く)

次の話を読む「中にすごい背の高いおじさんがいて……」夏休みに訪れた里山で見た奇妙な“白い煙突”の記憶

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2025.08.14(木)
文=むくろ幽介