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夏休み直前の虫捕りイベント

 夏休みを間近に控えたある日のこと、アイデアマンだった校長の発案で虫捕りイベントが企画されたそうです。場所は偶然にもあの“白い煙突”がある学校そばの里山。

 夏休みもあと数日で終わるという時期の開催だったこともあり、ほとんどのクラスメイトは興味を示しませんでしたが、昆虫好きだったYさんとその友達であるTさんら数人は、集まって遊ぶ口実になると、参加を決めたのでした。

 “子どもたちだけで成し得た体験が糧になる”そんな謳い文句の元、このイベントはあくまで生徒主導。先生たちと協力してくれたPTAのお母さんたちが山の麓まで同行したそうですが、虫捕り自体は生徒たちだけというルールだったそうです。

 とはいえ、流石に危険も伴うので、実際にはPTAメンバーの1人でもあったTさんの高校生になるお兄さんが同行してくれることになりました。

◆◆◆

 そして迎えた当日の日曜日。

 Yさん、友人のTさん一家と他の友人3人、そしてクラスでもおとなしめだった女子グループ4名の家族と担任の先生が現地に集合しました。

「おはよー!」

「晴れてよかったねぇ~」

 穏やかに語らう女子グループとは裏腹に、Yさんたち男子グループはいつもは被らない麦わら帽子や虫かご・虫採り網を携えたその姿に大笑いして盛り上がったそうです。

「はーい、じゃあみんな準備はできたかなぁ~? 何かあればTさんのお兄さんに必ず聞くこと。そうしたら私たちに電話してくれるからね。1人行動はダメですからね。ここの駐車場のスペースでPTAのみなさんがおにぎりとウインナーとオレンジジュースをたっぷり用意して待っているから、2時間みんなで虫捕り頑張ってくださいね~」

「いってらっしゃーい」と手を振る大人たちの声が遠のくにつれて、辺りにはけたたましい蝉の鳴き声が響いてきました。

2025.08.14(木)
文=むくろ幽介