
ドラマ化、書籍化、コミック化と令和のホラーシーンの最前線で活躍する『禍話(まがばなし)』。2016年から生配信サービス「TwitCasting」で始まった怪談語りチャンネルは、北九州の書店員である語り手のかぁなっきさんと、その後輩であり映画ライターの聞き手・加藤よしきさんが織りなす、記憶にべっとりと張り付くような“禍々しい話”で多くのホラーファンの心を掴んできました。
そんな『禍話』から今回は、小学生が親戚の家で垣間見たという身も凍る恐怖をご紹介します――。
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残されたメモリーに納められていた怪談

禍話で紹介される怪談の中に「忌魅恐(いみこわ)」と呼ばれるものがあります。とある地方大学の非公認文芸サークルが収集していた怪談たちを紹介するコーナーなのですが、実はこのサークルのメンバーはある日突然大学から全員除籍になったばかりか、姿まで消してしまったのです。
部室に残されていたのは、彼らが10年以上に渡り代々収集してきた怪談をまとめた冊子の山とひとつのUSBメモリーのみ。
これからお話する出来事は、そのUSBメモリーに収められていたものです。
◆◆◆
今から60年以上前の1960年代。当時小学2年生だったNさんの家に一通の電報が届きました。
当時は電話の普及率も高くなく、速達電報が届くこともまだ多かったそうです。そして、そうした知らせは往々にして吉報ではありませんでした。
「まさかKちゃんが……あんたもよく一緒に遊んでいたのにねぇ~……」
亡くなったのは従兄弟のKくんでした。
いつも短パン姿で、膝丈まである黒い靴下を履いていたKくん。彼とは歳も近いこともあって、年末に家族で遊びに行った際には、よく一緒になって虫捕りやトランプをして遊んでいたそうです。
残念そうな表情で母親に頭を撫でられたNさんでしたが、正直言ってKくんとの思い出はそれほどありませんでした。お互いあまり喋るタイプではなく、親戚同士が酒盛りをしているときに何となく子ども同士で時間を潰しあっていた程度だったのです。
2025.08.10(日)
文=むくろ幽介