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本当にKくんが描いたのか

 鉛筆をギュウギュウと押し付け、何度も行ったり来たりさせながら描いたと思われるシワだらけの画用紙。

 描かれていたのは、この屋敷から続く砂利道とその先にある門。砂利道にポツンと佇むKくんと思しき背の低い子ども。そして、門の先に立っている背の高い人物でした。

 その人物だけ、赤いクレヨンで頭のところに帽子のようなものがグリグリと描かれているのが恐ろしかったそうです。

 ただ、もっと恐ろしいのはあれだけ絵の上手かったKくんが、こんな幼稚な絵を描くとは思えなかったことの方でした。

 そっと画用紙を引き出しに戻し、Nさんは部屋を出てお手洗いに行きました。

 翌朝、Kくんのお葬式は終わりを迎え、Nさん一家は帰路につきました。

 遠ざかっていくKくんのお屋敷を車のバックミラーから眺めていたNさん。このときは、翌年あんな目に遭うことなどつゆも知りませんでした。

(後編に続く)

次の話を読む従兄弟の一周忌……夕暮れ時に門の向こうで目撃したのは、かつて絵で見た“奇妙な赤い帽子の女”

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2025.08.10(日)
文=むくろ幽介