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金曜の夜、先輩の運転で向かった先は……

 金曜の夜。時間はすでに21時を回っており、疲れもあったそうですが、MさんはHさんの車に乗り込んでとある場所まで行くことになりました。

「マジでごめんな~。荷物後ろ置いて」

 カーナビに住所を入力し始めたHさん。

「全然気にしないでくださいよ。それより、今日こそ何をしに行くのか教えてくださいね」

 実を言うと、Mさんはあの日以来何度も用事の詳細をHさんに聞いていたそうですが、その度にのらりくらりとかわされていたのです。

 Hさんはカーナビに住所を打ち終えるとゆっくりと車を出し始め、意を決したように息を吐いてからこう言いました。

「はぐらかしていてすまん。でも、なかなか言い出しづらくてな。今から、親戚の家を訪ねるのに付き合って欲しいんだ」

「え、今からですか!? なにかあったんですか…?」

「一週間くらい前、家族に彼の家を訪ねるように頼まれていたんだよ」

 そこからHさんが語り始めた内容は、にわかには信じがたいものでした。

2025.08.13(水)
文=むくろ幽介