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親戚に頼まれて電話をすると

Hさんの親戚にKさんという40代半ばの年上の男性がいました。
たまの集まりで顔を合わせると快活に挨拶してくれる気の良い人だったそうですが、ここ最近様子がおかしく、年齢も近いHさんに様子を見てきて欲しいと親族に頼み込まれたというのです。
「『その程度なら……』って、休みの夜に一回Kさんに電話かけたんだよ」
『おお、元気? どうしたの、急に電話なんて』
電話越しのKさん声色は、Hさんのイメージ通りでした。この時点で一安心したそうですが、一応何か探らねばと世間話を重ねつつ、Hさんは徐々にKさんの近況について深掘りしていきました。
『変わったことねぇ~。まあ、最近家の前を毎晩同じ人が通るのは気になるな。近所の人の散歩かと思ったけど“着物着た女”でさ。近所にそんな和装の人いた記憶ないんだよね』
『仮に近所の人じゃないなら、それなりに近く住んでいないと毎晩はこれないですもんね』
『そうそう。それに顔がウチの嫁にそっくりなんだよ』
『はい?』
『でさ、そのことを嫁に話したら怒り出しちゃって。“不審者と同じ顔なんて言わないでよ~”ってさ』
2025.08.13(水)
文=むくろ幽介