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気づけば眠りに落ちて……

「じゃあ、さっき配った部屋割りのプリント見ろー。その組分けで右から並べー。並んだら荷物持って部屋行くぞー」

「お、Mと同じ部屋じゃん! あとはKとYもいる!」

「お前、今見たのかよ」

 旅の熱狂もひとまず収まり、Mさんは気心の知れたNくんを含むメンバーと共に、6人で2階の部屋に通されました。その後は体育着に着替えると、大きな体育館で卓球の練習に勤しんだそうです。

 時間はあっという間に過ぎ、外はすぐに暗くなりました。

 皆で騒ぎながらお風呂に入り、見た目やクオリティは普通なのに、やたらと美味く感じる天ぷらや唐揚げをむさぼるように平らげ、待望の自由時間がやってきました。

 家のベッドよりも重たく冷たい肌触りの布団に潜り込むと、嗅ぎ慣れないけど心地よい匂いがしたそうです。

「で、先生が『サーブのときはちゃんと体でボール追え』って言ってて——」

「IのやつずっとRのこと目で追っていたよな。絶対好きだぜ、あれ」

「マジで!?」

 楽しみにしていた自由時間。けれど、Mさんのその日の体力は底をつきかけていました。

「なあ、トランプやろうぜ」

「ん~……俺はいいや……」

 妙に騒ぐ友だちの声が心地よかったのと、日中の疲れがドッと来てしまったことが重なって、気がつくとMさんは深い眠りに落ちていました。

2025.05.06(火)
文=むくろ幽介