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朝になっても残る違和感

「おはよー、全然眠れなかったよ」

「あたしも……ねっむ」

「おっし、今日はスマッシュ祭りだな」

「お前はそれよりフォアドライブの練習しとけ」

 部員たちの声で賑わう翌朝。すっきりと目が覚めたMさんは歯磨きと朝食を済ませると、意気揚々と体育館に向かいました。

「おはようM!」

「うん、おはよう。めっちゃ、元気じゃん、Y」

「そうかぁ~?」

 その日コンビを組んだYくんは、あまりトークの中心になる性格ではなかったそうですが、合宿の空気に当てられたのかいつにも増して笑顔でした。

 数時間の練習を経てお昼休憩が近づいてきた頃、Mさんはあることに気がつきました。

 NくんやKくんら同室のメンバーが妙に静かというか、昨日までの熱気が嘘のように口数が少ないのです。そして、それとは引き換えにYくんがこれまで見たこともないほどに元気いっぱいなのも引っかかり始めました。

「楽しいな、合宿って! あの部屋分けになって良かった!」

 そんな勘ぐりが伝わったのか、午前の練習が終わり、お昼が始まる前の小休憩で皆がざわついていたタイミングで、NくんやKくんら同室のメンバーが腕を引っ張ってこう言ってきたのです。

「お前、昨日のあれ見てないの?」

「……何の話?」

「やっぱり見てないんだ……」

「だから何の話だって?」

「Yだよ。あいつ、昨日の夜、窓に向かってずっと話しかけていたんだぞ」

後篇に続く)

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2025.05.06(火)
文=むくろ幽介