この記事の連載

 怪談チャンネル「禍話(まがばなし)」は、生配信サービス「TwitCasting」で2016年から放送が続いている人気ホラーコンテンツ。北九州で書店員をしている語り手のかぁなっきさんと、聞き手であり映画ライターの加藤よしきさんが語る恐怖譚は、思わず身震いしてしまうものばかり。

 今回はそんな禍話から、小学生男子が部活の合宿先で目撃することになる“ある人影”にまつわる戦慄のお話をご紹介します。

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窓の外の“誰か”と話す級友

「寝ぼけていたんじゃないの?」

 そう返すもNくんたちの表情はこわばったまま。そして、彼らは徐々に昨夜の詳細を語り始めました。

 あの夜、Mさんが眠りについたあと、トランプ遊びにも飽きた一同は電気を消してもぞもぞと布団に潜ったそうです。次第に寝息が立ち始め、そこから1時間くらい経った頃。NくんはおもむろにYくんが布団から出ていく気配で目を覚ましました。

「あいつ、窓のカーテンを開けてさ、その向こうにいる誰かと話し始めたんだよ」

「……ん、どういうこと? 2階だろ?」

「年上のお姉さんに話している感じでさ。デレデレしていたというか、なんかムカつく感じで——」

 そこまで聞いたところで昼食の席に着く人の流れが増え始め、会話は途切れてしまったそうです。

 モヤモヤした気持ちのまま始まった午後の練習。

 Mさんは練習の合間にトイレに行こうと体育館から出た際に、改めて宿泊している建物を見てみました。

 嫌にピカピカな自分たち部屋の窓には、ベランダはおろか手すりすら付いておらず、加えて、その階下の草むらに山で採ってきたようなくすんだ色の花が、安っぽい色紙で丸められた花束になって置いてあったそうです。

 その日の夕食はあまり喉を通りませんでした。

 ダラダラと食べてしまったせいで、部屋に戻ると自分が布団を敷けるスペースは例の窓際だけになっており、当然、Yくんも自分の隣。昨日、自分だけ先に寝たことへの当てつけかよ……と、内心Nくんたちに腹が立ちましたが、Yくんの前で文句を言うこともできなかったと言います。

 そして、その日の夜がやってきました。

2025.05.06(火)
文=むくろ幽介