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ホテルライクの暮らしを求めるなよ!

まめこ だって私がキッチンにいると、タビが蛇口を舐めようとするんですよ。でも私はあんまりそこに口をつけてほしくない。だから「やめろ」って言ってやめさせるんですけど、洗面所に移動したらそこでも蛇口を舐めようとして。あいつ、私が怒ってるのが楽しくて絶対わざとやってるんですよ!

姉吉 私から見たら、「水を出して」とお願いされているようにしか見えないんですけどね。だから本当に怖いです。

まめこ 私は嫌がらせだと受け止めています。だってそんなワガママに付き合ったら、一生蛇口の水を出し続けなあかん! しかも、水は常に猫用のお皿に用意してあるんですよ。そっち飲めよ! うちにホテルライクの暮らしを求めるなよ!

――よく人間は“猫の下僕”と言われるほど、一緒に暮らす猫に仕えてしまう印象がありますが、まめこさんはなんか違うような……?

まめこ 人間と猫の関係というより、動物同士が一緒に暮らしている感じですね。こまちがいたときも、それは変わらないかも。私は獣として生きています。

姉吉 だからまめこは人間が猫を「世話してやっている」という気持ちが根本的にないんですよ。対等すぎて「水は自分の皿から飲め」と。

まめこ もちろんごはんをあげたり水を替えたりはしますよ!

タビとメロが最近ブログにあまり登場しないワケは…

――と言いつつ、まめこさんが定期的に彼らを病院に連れて行ったり、小さな異変も見逃さないほど観察していることを読者は知っていると思います(笑)。タビ・メロとの暮らしをマンガにするなかで気づいたこと、変化したことなどはありますか?

まめこ 実はちょうどマンガの描き方を悩んでいるところで……。

――そうなんですか!?

まめこ これまでは、猫は感情や性格がよくわからない謎の存在だったから、タビやメロを「キャラクター」っぽく描いていたんですよ。二足歩行だったり喜怒哀楽がわかりやすい人間っぽい表情だったり。自分自身がよくわかっていないものをブログに登場させるには、キャラクター化するしかなかったんです。

 でも、猫との暮らしが長くなって、自分の中で猫の解像度が上がっちゃったんですよ。二足歩行の人間みたいな猫では、こいつらのかわいさを描ききれないんです。

 例えば、猫が走るときのお尻の形のかわいさは、今のタッチだと表現がしきれない。今のあいつらの尻は人間の尻ですから。猫パンチをくりだす様子も、今ならボクサーみたいな描き方になっちゃうけれど、リアルな猫の猫パンチのほうがきっとかわいい。とにかく今のあいつらは「猫」じゃないんです。それに納得いかなくなってしまったんですよ。だって片方(メロ)なんてタヌキじゃないですか(笑)?

 自分の目に映った瞬間をマンガでも捉えたいし、そのかわいさをリアルに描いてみたい。だけど、リアルに描くのはまだ下手だし、今のタッチでリアルさを追求するのもなんか違う、みたいな……。だから最近タビとメロをブログに登場させる回数がちょっと減っちゃったりして、悩んでいるんです。リアルな絵でもよければネタはいっぱいあるんですけどね。

――なんと、そんな悩みがまめこさんにあったとは……。確かにいま思い返せば、犬のこまちは人間らしい表情でも、二足歩行でもない。リアルな「犬」として描かれています。

2025.02.21(金)
文=船橋麻貴
マンガ・写真=まめきちまめこ