猫写真家・沖昌之さんと“ちょっと変”な猫たちの奇跡の瞬間
愉快で味わい深い猫の写真が人気の写真家・沖昌之さん。カメラ未経験から猫の撮影を始め、脱サラして出版した写真集「必死すぎるネコ」がシリーズ3作で累計8万部を突破。撮影した猫を載せるインスタグラムのフォロワーは49万人(2025年2月現在)と、大きな注目を集めている。
ほぼ初出の作品を集めた写真展「これネコ それネコ?」が2月21日(金)から東京ミッドタウン フジフイルム スクエア内で開催される。撮影秘話や写真展の見どころについて聞いた。
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――沖さんが撮る写真は、おかしみや不思議さも含めて、猫の“ありのまま”が詰まっている気がします。
猫って、誰がどう撮ってもかわいいんですよ。それぐらい文句なしにかわいい生き物です。いわゆる正統派のかわいさももちろんいいけれど、「実はこんなかわいさもあるよ!」という自分なりの提案をできればと思っています。
僕自身、猫を撮り始めるまで、「気ままでツンデレ」とか「香箱座りして日向ぼっこ」みたいな、よくある猫のイメージしか持っていませんでした。でも、写真を撮って観察するようになったら、それぞれの性格の違いや行動の面白さ、猫同士の関係性の複雑さなど、違う側面がどんどん見えてきて、猫がもっと好きになったんです。
なんでその表情? とか、なんでその格好なん? とか、なんでそんなことになったんや! みたいな「なんで」の部分に潜むかわいさに惹かれますね。そこに、その子らしさや猫たちの関係性が現れるとも思うので、そういう瞬間を大切に撮影しています。
――らしさが見える瞬間は、ある程度、猫たちと関係性を築かないと撮れないのかなとも思うのですが、普段どうやって撮影されているのですか。
最近は、猫がたくさんいる「猫島」で撮ることが多くて、夜明けから日没まで、とりあえず徘徊していますね。猫がいる地域を転々としながら撮れるシチュエーションやタイミングを探しつつ、猫たちに僕という存在に慣れてもらうというか。
やっぱりその子らしい自然な姿を撮ろうとしたら、自分がその猫にとって風景の一部になるしかないのかなと思うんです。「あいつ昨日も来とったな」「明日も来そうやな」「なんかずっとおるな」となっていけば、僕に対して違和感がなくなって、夢中になったり、必死になったりしているところを、たまに撮らせてもらえる。そんな感じでしょうか。
――では例えば、今度の写真展でも展示される予定というこちらの作品、いろいろ最高なんですが(笑)、これもやっぱり時間をかけて距離を縮めて撮ったものですか。
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あ、それはわりとすぐ撮れました(笑)。この星マークのある塀のあたりに2匹がいたので、なにかストーリーがある絵が撮れたら面白いなと思って見ていたんです。
で、2匹がそこを離れたら、違う場所に撮影に行って、また戻ってきて様子を見て、と何回かやっていたら、2匹がじゃれ合いだして星の方へ走っていって。なんかしそうだなと構えていたら、撮れました。スーパーマリオじゃないけど、スターを取り損ねて「あ~~」みたいな絵にも見えて、かわいいですよね。
猫は気分や天候で、いる場所もやることも違うので、こういうラッキーパンチもあれば、まったく撮れない日もあって、まちまちですね。
2025.02.20(木)
文=熊坂麻美
撮影=山元茂樹
写真=沖 昌之