当時の野球道具を忠実に再現した、多種多様な「野球カステラ」の世界

 志方さんが注目する「野球カステラ」の面白さのひとつには、100年前の野球道具をモチーフにして、忠実に再現している点があるそうです。

 ストラップがボタンでとめられた、クリームパンのようなフォルムのグローブや、ボールがつかめない仕様のキャッチャーミットなど、80~100年前の野球道具は、現在とはまったく違うもの。志方さんは当時の道具を集め、各店の焼き型を調べるなかで、グラブのボタンの位置が逆になっている野球カステラを発見しました。

「型って焼いたら反対になるから、焼き型を作るときに間違ってそのまま複製されてきたのでは。その間違いがルーツをたどるきっかけになったんです。ほかはぜんぶ忠実に再現しているのに、エラーが起きているのが面白いんです」。そう話してくれました。

 こちらは「インジケーター」という、審判がボールカウントをするための道具。

 お店によって野球カステラのインジケーターは、カウンターのギザギザが綺麗に再現されているものもあれば、省略されてカバンのような形になっているものもあります。多くの人が「これはなに?」「スコアボード?」とモチーフがわからなかった野球カステラも、野球カステラ愛好会の調査の結果、野球殿堂博物館に同じ仕様のものが所蔵されていることを発見し、インジケーターだと判明したそうです。

 とにかく紐解いていくのが面白いという、野球カステラの世界。「調べても調べきれない。それが面白い」と志方さんは熱弁します。自作した「野球カステラマップ」は2代目。どんどん書き足していったそうで、1枚の中に情報と情熱が詰まっています。

 「新たな職人さんが現れるのもいいけれど、今の職人さんが続けてくれるのも僕の願い。みなさんご高齢なので、どうかお体に気をつけながら」と思いを語ってくれました。

 神戸から日本、そして世界へ。神戸で愛され、大切に守られてきた「野球カステラ」の人気に火がつく日は、そう遠くないかもしれない。

野球カステラプロジェクト

https://yakyukasutera.amebaownd.com/

 

「野球カステラ愛好会」インスタグラム

https://www.instagram.com/yakyukasuteraaikokai/

 

2025.01.26(日)
文=狸山みほたん
写真=釜谷洋史