再注目のきっかけでもある「野球カステラ」マップ。制作者に聞く歴史とこだわり

  野球カステラのお店を紹介する「神戸野球カステラマップ」を作ったり、「野球カステラプロジェクト(野球カステラ愛好会)」を立ち上げてイベントを開催したりと、野球カステラの魅力を伝える活動をするのが、神戸市職員の志方功一さんです。コレクションがそろうご自宅にうかがって、お話を聞きました。

 志方さんが野球カステラと出会ったのは、仕事で地元産業の活性化に取り組もうとしたことがきっかけ。もともとは、神戸のお土産として150年ほど前から販売されていた「瓦せんべい」に注目してお店をまわっていたところ、たくさんのお店が「野球カステラ」も販売していることに気づいたそうです。

 調べてみると、全国的に販売されているものではなく、神戸にだけ集中してお店があることがわかりました。調査していくうちに、焼き型がいくつかのお店で受け継がれていることや、大正時代の野球道具を綺麗に再現していることなどを知っていくなかで、大きな感動を覚えたそうです。

 「自分で足を運んで、ひとつずつ確かめていきました。現場に行かないとわからないし、現場に行くと、魅力的なものが見つかります」と興奮気味に話す志方さん。地元の人たちや、お店の人ですら気づいていなかった独自の野球カステラの素晴らしさを広めるため、活動を始めました。

 活動のひとつが、神戸煎餅(せんべい)協会との連携プロジェクト「焼き型バンク」。使わなくなった野球カステラの焼き型を集めてメンテナンスし、イベントに協力したり、新しく出店するお店に提供したりしているそうです。

 焼き型は数種類あり、モチーフやディティールが異なるものも。使う焼き型で、お店の歴史や系譜がわかることもあり、志方さんが注目する大きなポイントでもあります。

 野球カステラに出会い、「どうして野球なんだろう?」との思いから、野球伝統博物館を訪れるなどして歴史を紐解いていった、志方さん。

 神戸の菓子店「本高砂屋」が、野球カステラを「野球」という名前で最初に商標登録したのが、大正10年。その前後には、日本でプロ野球チームができ、大正13年には甲子園球場が完成しました。とくに神戸は、学生と外国人クラブが交流戦をするなど、野球というスポーツと近い距離にあったといいます。

2025.01.26(日)
文=狸山みほたん
写真=釜谷洋史