この記事の連載

がむしゃらに頑張っていた過去の自分へ恩返し

――シンガーソングライターとして、そして俳優として日々お忙しくされていらっしゃいます。その中で、このような大きな作品の主演を演じよう、と決めたきっかけがあれば教えてください。

 まさかこんな大役を任せていただけるとは想像もしていなかったので、今の自分にできるのかどうか不安な部分もあったのですが、20代の頃に、それこそ夢に向かって努力をしていた当時の自分が喜んでくれるような気がして引き受けました。がむしゃらに頑張っていた自分に恩返しするような気持ちです。

 およそ7年ぶりにミュージカルの舞台に立つことになり、普段ミュージカルの舞台を主戦場にしていらっしゃる俳優の方々がいかに日々努力し、体調管理に気を配っているかをひしひしと感じております。もう、尊敬しかないですね。

 正直なところ、どんなに稽古を重ねても不安はゼロにはならないとは思うんです。でも、不安を感じることは悪いことではないし、誰しもが持つ感情ですよね。不安で気持ちがいっぱいになってしまっているということはなく、W主演の松下優也さんをはじめ、ほか多くのキャストの方々と「いい作品を作り上げたい」と、心踊っている自分もいます。

 この物語の持つ力や雰囲気を大切にしながら、オリジナリティに溢れた作品にしたい。普段からミュージカルの舞台に立っているわけではない僕を選んでくださった理由もそこにあると勝手に想像しているので、純度の高い表現ができたら嬉しいですね。

松下洸平(まつした・こうへい)

シンガーソングライター・俳優。2008年、シンガーソングライターとしてデビュー。翌年より俳優としての活動を始め、NHK朝の連続テレビ小説『スカーレット』(‘19)でヒロインの夫、八郎役で人気を博す。

「ケイン&アベル」

20世紀初頭、アメリカ・ボストンの名家に生まれ、銀行の取締役になるウィリアム・ケイン(松下洸平)。ウィリアムと同じ日に、劣悪な環境で生まれ、孤児として過酷な人生を生きるアベル・ロスノフスキ(松下優也)。この二人が宿命的な出会いを果たし、彼ら自身の人生を大きく変えていく。ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説『ケインとアベル』を世界初のミュージカル化。
出演:松下洸平、松下優也、山口祐一郎ほか
https://www.tohostage.com/KANEandABEL/

← この連載をはじめから読む

2025.01.21(火)
文=高田真莉絵
撮影=深野未季
スタイリング=丸本達彦 
ヘア&メイク=KUBOKI(aosora)