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 日本文学界の巨人・筒井康隆による老人文学の傑作『敵』。77歳の引退した元大学教授・渡辺儀助の丁寧で平穏な暮らしに、じわりと「敵」が迫り来る物語です。

 劇中、重要な役割を果たす儀助の元教え子、鷹司靖子を演じた瀧内公美さんにインタビュー。役作りの難しさや、大河ドラマ『光る君へ』の源明子役との違いなど、たっぷりとお聞きしました。


――まずはオファーの決め手から教えてください。

瀧内公美さん(以下、瀧内) 吉田大八監督とはいつかご一緒させてもらいたいと願っていましたので、オファーをいただいた時は嬉しくて嬉しくて、すぐにお受けしました。脚本もすばらしく、こんなご褒美みたいな仕事が来るんだな、と感激しました。

 大八さんの作品は、長編映画デビューされた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)からずっと追いかけ続けていました。なかでも私が大好きな大八作品は、『パーマネント野ばら』(10年)。

  菅野美穂さんが演じた「なおこ」のような役を、いつか自分も演じたいと思いながら観ていました。

――脚本を読んだ感想は?

瀧内 まずは原作を読まずに、「この先の展開はどうなっていくんだろう」「“敵”ってなんだろう」と思いながら脚本を読ませていただきました。そして、一見何の変哲もない、77歳の元大学教授、渡辺儀助の日常を描いた物語でありながら、ダイナミックに物語が運ばれていく展開に、素直に感動しました。

 ここにきっと、大八さんならではのシニカルな笑いのエッセンスが加わり、これは絶対に面白い作品になるだろうと、撮影がとても楽しみになりました。

――本作がモノクロ作品であることは、はじめからわかっていたのですか?

瀧内 オファーをいただいた段階では、まだモノクロになるかどうかは決まっていなかったと思います。

 撮影に入る前に、「今回の役は、原節子さんのイメージでお願いします」と大八さんから言われていたので、原節子さんの出演作をひたすら観てイメージをふくらませていました。圧倒的にモノクロ作品が多かったので、実際に映画がモノクロになると言われたときに、イメージはつきやすかったと思います。

2025.01.17(金)
文=相澤洋美
写真=釜谷洋史
ヘアメイク=董冰
スタイリスト=三田真一/Shinichi Miter
衣装=TARO HORIUCHI
アクセサリー=Hirotaka