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 ミュージカル俳優だったら“喉から手が出るほどやりたい役”を片っ端から無双中の甲斐翔真さん。2024年は『イザボー』を皮切りに、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』、そして『next to normal』と休むことなく話題作に出演、どの作品でも高い評価を得ています。そんな甲斐さんが次に射止めたのはミュージカルの大作、『キンキーブーツ』のローラ役。出演への思いを語っていただきました。


“まだ開かれてないトビラ”を開くのが、このローラという役

――オーディションに参加されたとのことですが、ローラ役が決まったときの心境を聞かせてください。

 『キンキーブーツ』は初演から見させていただいていて、どれだけ人々に愛されているのかも知っていましたし、ローラという役が難しい役だというのも理解していたので、そういった意味では挑戦的な気持ちでオーディションを受けました。

 いざ受かったら、「ああ、この切符が手元に来たんだな」という喜びはありましたが、覚悟を決めるような瞬間でもありました。

――別のインタビューで、ご自身の思い描いているローラ像とご自身が違うとおっしゃっていたのですが、どんなローラ像を描いていらしたのでしょう。

 いちファンとして過去に演っていた(三浦)春馬くんや(城田)優さんのローラを観たときに、「今までやってきた僕の役にはなかった」と思ったので、ローラを演じるには、僕のまだ開かぬトビラを開いていく必要があるなと。

 だからこそ、自分がやるとなったときは「あんなふうに人々を魅了していたあのローラを、僕が出来るだろうか」という思いが先に生まれましたね。

――甲斐さんが考えるご自身のイメージはどういったものですか?

 たぶん皆さんは僕のことを「ミュージカルオタクで、まっすぐに役と向き合った、夢を言葉に出して叶えていく」みたいなイメージをお持ちなんじゃないかと……(笑)。

 それもそうなんですが、僕自身はわりと楽観的なところがあります。だからこそまっすぐ進めてきているのかもしれませんし、共演者の方々にも物怖じせずに接しているので、あんまり他にいないタイプなんじゃないかと思います(笑)。実際にそう言ってくださる方もいらっしゃいますし……。自己分析って難しいですね。

――ご自身ではどのようにローラという役を解釈して、どういうふうに演じようと思っていらっしゃいますか?

 ローラ、もといサイモンは、ドラァグクイーンという世界で自分の可能性を開花させた人だと思っていて。人には、自分の居場所を見つける瞬間ってあると思うんです。これを身につけた自分は最強だ、と思える瞬間が。

 “俳優・甲斐翔真”の人生とローラの人生を照らし合わせたとき、僕はドラァグクイーンをやったことはないですが、そういう自分の居場所を見つけるような“瞬間”を共感させていって、結果的に表現に繋げていけたらいいなと思っています。

――ご自身の居場所を“ミュージカル”というところに見つけた甲斐さんが、ローラとリンクするところもあるのではと思います。

 そうかもしれないですね。いろんな公演を今までやってきましたが、何十公演に1回、とてつもない公演があったりするんです。その瞬間は、何もかも忘れて幸福に満ちあふれるというか……。それが好きで、僕も芝居をやっているので、きっとローラもそういった瞬間を求めて、サイモンでは叶えられないことをローラで勝ち取りに行っているのだと思います。そんな構図はリンクしているかもしれません。

――ローラを演じるための準備として、体づくりにも挑戦されましたか?

 ファンの方はもしかしたら薄々気づいていらっしゃるかもしれませんが、1、2年前とはかなり体型が変わっているんです。

 ローラは元ボクサーという肩書なので、そこは忠実にやりたいと思っていて。ローラの迫力とかパワー、そして“えぐみ”は、キレイで妖艶な格好とは真逆の男らしい体つきというところにもあると思うので、そこも意識しています。というわけで、照準は来年の4月に合わせてあります! 体づくりはジムに通って行っています。

2024.12.29(日)
文=前田美保
写真=佐藤 亘
ヘア&メイク=木内真奈美(オティエ)
スタイリスト=山本隆司(style³)