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 ミュージカル界の若きプリンス、といえば今はこの人しかいない!と誰もが認める、甲斐翔真さん。まさに“無双中”といっても過言ではない活躍ぶりで、話題作のキャストとして名前を見ない日はない、という状態です。

 まだ26歳という若さで名だたるミュージカルへ続々と出演を果たす甲斐さん。そんな甲斐さんが2024年1月から出演する作品がミュージカル『イザボー』です。

 本作は、日本発ミュージカルを世界へ発信する“MOJO プロジェクト”の第一弾として、フランス百年戦争の時代、欲望のままに生き、国を破滅へと導いた最悪の王妃イザボーの半生を描いたもの。先日26歳の誕生日を迎えたばかりの甲斐さんは、望海風斗さん演じるイザボー・ド・バヴィエールの息子、シャルル7世を演じます。そんな甲斐さんに本作出演への意気込みを伺いました。


経験が少ないことを逆手にとり、ポジティブに進み続ける

――この一年は、特にたくさんの作品にご出演されていて、演じられている役もタイプが違っています。そこから学ばれたことを教えてください。

 3年前にミュージカルに出始めたときは、自分が理想とするものには到底追いつかないし、常に「自分でいいのだろうか」と思ってやっていましたが、ようやく何となく“捉えられる”ようになってきました。

 もちろん、まだほど遠い場所にいますし、これからも満足するつもりはまったくないのですが、やっと“板に乗った”気がしています。板(舞台)の上でチカラを抜いてやりたことをやるためには、こんなにも時間と場数が必要だったんだと、最近やっと気付いたところでもあります。

――まだ3年なんですね!!! もっと長く活躍されているイメージです。

 2019年の12月が初舞台だったので、3年半くらいですね。出ている作品数が多いので、「もっと長く舞台に出ているイメージ」とよく言われます。

――プレッシャーを感じることはありますか?

 基本的に楽観主義者なので、ダメだったらダメで別の道に行けばいいやって(笑)。楽しくやれているのが一番大きいと思います。この手を放してしまうと死んでしまうという感じだと楽しくできないかなって。ミュージカルやエンターテインメントが好きだから、とても贅沢なことだけど、常に楽しくありたい。苦しいこともありますけど、充実感を持って今までやれていると思います。

――錚々たる方々と共演、そしてWキャストなどを経験されています。そこに対する“思い”をお聞かせください。

 僕が客席から観ていたような方と肩を並べるとなると、やっぱり“違う方法”で勝負しないとならない。“勝負”……、という言い方はちょっと違うかもしれないですけど、埋もれないためには僕にしかできない表現や持ち味を出さないといけないと思っています。

 Wキャストの相手の方と同じふうにやっても、歴も場数も全然違うわけで……(苦笑)。経験のなさ、知識の少なさ、猪突猛進に前向きでポジティブ!みたいな感じのときにしかできないこと、というのがあると思うんです。

 そんなハングリーな精神状態の時間をすごく大切にしたいですし、それを役に反映できるのは今のうちだけですから。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』で演じたクリスチャンなんかはまさにそうで、ハングリーだからこそアメリカからパリに渡ってきたわけだし、その力強さは若さや無知という状況だから生まれるもの。今の僕にできるのは、そういう役だと思います。

2023.11.30(木)
文=前田美保
写真=佐藤亘
スタイリスト=伊里瑞稀
ヘアメイク=ASUKA(a-pro.)