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『光る君へ』で演じた源明子と真逆の役作り

――モノクロだと、カラー作品と比べて演技の仕方などが変わってくるのですか?

瀧内 モノクロの場合は、陰影がはっきり出ます。また、カラーより情報が少ない分、想像を搔き立てられるところも多いので、なるべく大仰なことはしないよう、意識はしていました。陰影が生み出す美しさが失われてしまったり、想像の余地がなくなってよさが引き立たなくなったりしてしまうような気がしたので。

――以前のインタビューでは、「モノクロ映えする顔だとよく言われる」とおっしゃっていました。

瀧内 お恥ずかしいんですけど、私、そんな発言をした記憶がないんです……。でも確かに以前、『火口のふたり』(19年)という映画のフォトストーリーブックを撮影していただいた野村佐紀子さんから「瀧内さんはモノクロ映えするね」と言っていただいたことはあります。

 別の作品でも、「瀧内さんは、モノクロが似合うと思う」と監督から言われたことがあるので、他者からはそう見えるのではないかと思います。自分ではまったく自覚はありませんが……。

――今回演じた鷹司靖子はどのように役作りをされたのですか?

瀧内 鷹司靖子という女性は、儀助さんの教え子として実在する人物でありながら、儀助さんの「理想の女性像」という象徴的存在でもあります。どこまでが現実でどこからが虚構なのかも曖昧なので、原節子さんの清楚で凜としたイメージを保ちつつ、77歳の儀助さん世代の男性が思い描く「理想の女性」として画面に映るよう、立ち居振る舞いを工夫しました。

 靖子はまた、儀助さんが隠しておきたい部分を露呈する存在でもあると思います。清純な教え子としての彼女と、セクシャルアイコンとしての彼女をどう変化させていくのかを大八さんに微調整していただきながら演じていきました。人間がもつ欲望の象徴でもあり、清純な聖女でもあるという、主観ではなく客観的にいろんな側面を想像させる役柄なので、演じるのは大変でした。

――大河ドラマ『光る君へ』のパワフルな源明子とは真逆の「静」の演技も大変だったのではないでしょうか。

瀧内 おっしゃる通りで、『光る君へ』で演じた源明子と、本作の鷹司靖子は真逆の役作りでした。

 明子に求められたのは、エネルギッシュでパワフルな演技です。さらに、「明子だったらこうするだろう」と自分のなかで明子の行動動機をつくり、それが物語にどう作用していくかを考えながら役作りをしていました。

 一方、本作の鷹司靖子は、「原節子さんのイメージ」と大八さんに言われたように、芯は強いけれど、清楚で控えめな女性のイメージです。靖子の意思や欲求ではなく、儀助の考えや欲望に対して動くことが求められたので、「靖子だったらこうする」という決断ができませんでした。靖子の行動原理を考えてはいけない、というのは、役をつかむまで非常に難しく、苦労したところですが、俳優としては大きなやりがいがありました。

2025.01.17(金)
文=相澤洋美
写真=釜谷洋史
ヘアメイク=董冰
スタイリスト=三田真一/Shinichi Miter
衣装=TARO HORIUCHI
アクセサリー=Hirotaka