#3『セシルの女王』こざき亜衣/小学館

 16世紀のイングランド、欲望と陰謀が渦巻く王宮が舞台。のちにエリザベス1世の重臣となるウィリアム・セシルの少年期からの活躍とエリザベス1世との絆を描いた本格歴史ロマン。

荻野さん推薦コメント

「時間が取れる年末年始だからこそ、物語の世界観に浸りながら読み耽りたい……。本作はそんな欲望を叶えてくれるマンガです。服装や調度品などが丁寧に描かれ、かなり史実に基づいた内容で展開されるため、16世紀のイングランドを堪能できます。

現代の日本人の感覚ではわかりにくい、王族、貴族の感覚、そして複雑な時代背景が描かれているのになんともわかりやすく、物語としての完成度が高いので、歴史ものが初めての方にも、もちろん歴史ものが好きな方にも、おすすめです。

彼らが何を思ってこうなっていったのか? 読み進めていくと、登場人物全員が運命に翻弄され、苦しみ、ただ必死に生きるひとりの人間であったことを感じて涙します。現代の私たちでもきちんと共感でき、思想や感情が根付いたキャラクターたち。没入するにはぴったりの一作です」

#4『最強の詩』宮田大介/集英社

 熱量たっぷりの青春スポーツマンガ。限界集落で育った山田金山は、高校の部活動でラグビーと出会う。ルールも知らないフィジカルモンスター金山が、型破りなラグビーで世界レベルの天才たちを凌駕し、高校ラグビー界を大きく揺るがすことに……。

荻野さん推薦コメント

寒い冬だからこそ熱いスポーツマンガが読みたい!! 読み始めた瞬間に、これこれこれ! 待ってました!と、ページを捲る手が止まらない熱量。フィジカルモンスター(というか化け物)金山の圧倒的主人公感。ラグビーのルールを全く知らずに読み始めましたが、なんだこれ、めちゃくちゃ面白い! こんなに熱いのに、物語の緩急もばっちりで、息切れしないで読めるのがすごい。

真っ直ぐ王道でありながら今の時代の風を感じる、声を大にして大好きと言いたい作品です。この記事が公開される頃は、全国高校ラグビー大会真っ最中ということで、私も初観戦してみたいと思います」

#5『寿々木君のていねいな生活』ふじもとゆうき/白泉社

 15歳の高校生、寿々木薫は強面だけどお菓子づくりと植物の世話が好きな心優しい少年。自分に自信が持てなかった寿々木が、小柄で腕っぷしが強い美少年の春名新との出会いをきっかけに変わっていく。ギャップあるふたりの友情と、コミカルな学園生活を描いた青春グラフィティ。

荻野さん推薦コメント

「朝からハーブティーを淹れ、妹の人形のお洋服をつくり、嬉しいことがあるとお菓子を作ってしまう寿々木くんは、穏やかで優しいのに、強面の見た目とのギャップ故に自信がなく、周りの目を気にしがち。そんな寿々木くんが、腕っぷしの強い美少年・春名くんや、クラスの皆とともに過ごす中で、徐々に心を開き、笑顔が増えていくのがもう可愛いくて愛おしくて……!

お母さん感溢れる寿々木くんと、みんな良い子で素敵なギャップを持っている登場人物たち。じんわり心に沁みて、1年の締めくくりや、新たなスタートの際に、穏やかな気持ちになれる一作です。年末年始くらいは丁寧な生活を心がけたいと思っているのですが、寿々木くんのお母さんと同じ「豆を挽くより寝ていたい」というタイプなので、寿々木くんを見ているだけで満足してしまう予感です……」

honto年末年始ビッグ感謝祭

期間:実施中~1/14
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荻野 晶(おぎの・あき)さん

hontoコミック担当。話題作からBLまでマンガ全般をこよなく愛し、月に100冊以上読む雑食派。マンガのキャラクターを讃えるアワード「マガデミー賞」の審査員も務める。
honto https://honto.jp/

2024.12.28(土)
文=大嶋律子(Giraffe)