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当て書きの役柄を演じたドラマ「最高の教師」

――6月公開の『君は放課後インソムニア』では森七菜さんとW主演されました。心臓病である森さん演じるヒロインに寄り添う丸太役も印象的でした。

 初めての主演映画でありつつ、マンガ原作の実写化なので、そこに対しての役作りや映画作りを初めて意識した作品でした。プレッシャーまではいかなくても、原作のオジロマコトさんを始め、原作の大ファンの森七菜さんだったり、いろんな方の想いを背負っていることを強く感じましたね。

 とはいえ、現場では池田千尋監督も一緒に「とりあえずやってみようか」というメンタルでいることができて楽しかったです。「自分だったら、どう接して、どういう気持ちになるか?」と、丸太という役でなく、自分の感覚で森七菜さんが演じた伊咲について考えながら、台本を照らし合わせて演じました。

――さらに、7月放送のドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」では、ミステリアスな雰囲気を持つ3年D組の生徒・星崎役を演じました。同世代の俳優との学園ドラマはいかがでしたか?

 初めての学園ドラマだったのですが、プロデューサーさんと監督さんが「ZIP!朝ドラマ「サヨウナラのその前に Fantastic 31 Days」でご一緒した大好きなチームで、「この役は大兼の当て書きだから、自由にやっていいよ」と言われていたんです。

 「自分は、どう見えているんだろう?」と思いつつ(笑)、その自由がプレッシャーにならなかったというか、お芝居として成り立たせつつ「好き勝手やってやろう!」みたいな気持ちでした。でも、あそこまで集団で芝居することが初めてだったので、その大変さはありました。現場はめちゃくちゃ楽しかったし、いちばん記憶に残っている役かもしれないです。

――メイン回だった10話後に配信された、スピンオフドラマ「3年後の僕たちは」も印象的でした。

 3年後の星崎が、当時を10分間ぐらいアドリブで振り返る企画だったのですが、星崎が3年後にどうなっているのかを考えつつ、当て書きだと言われていたので、自分の3年後もちょっと考えながら話していたんです。そうしたら、泣くつもりがなかったのに、めちゃくちゃ泣けてきちゃって、「お芝居しながら、こういう瞬間があるんだ」と思いましたね。それまで、泣こうと思って泣くときもあるし、自然と涙が出るときもありましたが、もう号泣だったんですよ。またひとつ、お芝居の面白さに出会えたような気がしました。

奥平大兼(おくだいら・だいけん)

2003年9月20日生まれ。東京都出身。20年公開の『MOTHER マザー』で俳優デビューし、同作で「第44回日本アカデミー賞」新人俳優賞、「第94回キネマ旬報ベスト・テン」新人男優賞、「第63回ブルーリボン賞」新人賞などを受賞。23年公開の初主演作『君は放課後インソムニア』などでTAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞するほか、24年も『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』『赤羽骨子のボディガード』などの公開が相次ぐ。

【後篇】では最新出演作『Cloud クラウド』についても語っていただいています~

映画『Cloud クラウド』

町工場で働きながら転売屋として日銭を稼ぐ吉井(菅田将暉)は、先輩・村岡(窪田正孝)の儲け話には乗らず、コツコツと転売を続けていた。ある日、吉井は勤務先の工場の社長・滝本(荒川良々)から管理職への昇進を打診されるが、断って辞職を決意。郊外の湖畔に事務所兼自宅を借りて、恋人・秋子(古川琴音)との新生活をスタートさせる。地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇って転売業は軌道に乗り始めるが、吉井の周囲で不審な出来事が相次ぐように起こる。そして、得体の知れない集団による“狩りゲーム”の標的となってしまう。
9月27日(金)より全国公開
https://cloud-movie.com/

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Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2024.09.27(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖