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「里山十帖」を拠点に、訪ねてくる人たちとの出会いも新鮮

 以前は旅人のようにオーストラリア、ドイツ、インドなどの世界各地を巡り、ヨガや各国のベジタリアン料理を現地で学んできたという桑木野さん。郷土料理をマスターしたら離れるつもりが、気づけば今年で11年。

「20代のころは、海外で新しいことを勉強したり、興味があることを深めたり。異なる国の文化をインプットすることが自らを向上させることだと思っていたんです。逆に、同じ土地にずっといることは後退していくように感じられて」

「新潟にもこんなに長くいるつもりはなかったのですが、ひとつの場所に住み、毎年同じことを繰り返していく中で見えてくるもの、学ぶことがあります。また、これまでのゲスト感覚ではなくホストとして案内する側になったときも、新鮮な出会いがまだまだ訪れてくることに気づいたのです」

 「里山十帖」では「食」と「環境」をさまざまな視点で学び考えるイベントを開催していますが、今年は韓国のレストラン「オンジウム」のチョ・ウンヒさんとパク・ソンベさんを招いてのコラボレーションディナーが実現しました。

「今年はプライベートでも韓国に行き、憧れていた尼僧チョン・クワンさんから発酵の方法や野菜の保存方法を学ぶことができました。また、ここにいると、世界中のシェフが訪ねてきてくれるんです。まったく違うことをやっている世界中のシェフたちと同じベクトルでお話ができるというのがすごく面白いですし、彼らから学ぶことも多く、ますますこの土地でやっていこうと思うようになりました」

 「里山十帖」では二十四節気七十二候でメニューの名前を決めています。

「おそらく、世界中探してもなかなかないですよね(笑)。都会では見られない季節の移ろいを里山で感じられるというのは本当にありがたい。いつも感謝していますし、飽きることがないですね」

里山十帖

所在地 新潟県南魚沼市大沢1209-6
電話番号 0570-001-810
部屋数 13室
料金 1室2名利用1名2食付 32,395円~
http://www.satoyama-jujo.com/

次の話を読む【思い出になる食事が、新潟にはある】「新潟ガストロノミー」の発信地、「里山十帖」で南魚沼の贅を味わう

2024.09.14(土)
文=大嶋律子
写真=鈴木七絵