ツシマヤマネコの保護活動がおもしろい

 今、対馬には約100頭のツシマヤマネコが生息しているそう。自然が豊かな上島にはある程度の頭数がいて、下島は一時いなくなったのではと言われた時期もあったけれど、少しずつ目撃されることが増えてきているそうです。

 山の中で孤高に生きているようなイメージがあるけれど、実はヤマネコは里山の生き物なのだとか。

「餌となるネズミなどは田んぼや畑、間伐した森などに多いので、寝床は森の中でも餌場は里山。方言で“タネコ”と呼ばれるのは、“田んぼにいるネコ”だから。

 農家さんもヤマネコにやさしい米づくりをしているところもあります。減農薬を基本とした『佐護ツシマヤマネコ米』を生産したり、作付け時期をかえることによって収穫時期をずらしたり。もし一気に収穫してしまうと見晴らせて隠れる場所がない。徐々に刈ることで、餌とヤマネコ、どちらにも隠れる場所ができるわけです。地元の方はこういう形でも保護活動に協力してくれています」

 対馬野生生物保護センターにはケガをしたり衰弱したりしたヤマネコを24時間体制で収容しています。1992年から統計を取り始め、これまで416頭を収容。そのうち救護された個体は114頭。親離れの季節である10~12月は、人間社会に慣れていない子ヤマネコが交通事故に遭うケースが増えるそう。

「弱ったヤマネコを見つけたらまず通報していただくことが、私たちにとって大切です。だから救護してくださった方にはその個体に名前を付けてもらっています。リハビリが終わり、ハイライトとなるヤマネコを森に帰すセレモニーでは、その役目を見つけてくれた方にお願いしています。通報後はこちらが預かりっぱなしではなくて、その方と一緒にここまでがんばりました、という意味で」

 通報すると、そのヤマネコに名前を付けられるとは。ちなみに、これまで命名された名前には“犬小屋桃太郎”という珍妙なものも。その理由は「犬小屋におったオスだから」。干されていたブリにしがみついた状態で発見された“ブリ”ちゃんもいたそうです。

 ちなみに、今回、上島の無人直売場で見かけたネコがもしや……と思い、写真を柴原さんに見てもらいました。すると、「あ、イエネコちゃんですね」とにっこり。それはそうでしょうけど、残念……。ちなみにツシマヤマネコの特徴は、お腹のまだら模様と耳の後ろが白いことだそうです。

対馬

●アクセス 空路は長崎空港または福岡空港から約35分。海路は博多港(福岡)からフェリーで4時間40分~5時間、高速船は約2時間15分

取材協力
hotel jin https://www.hoteljin.com/

古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

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2024.08.24(土)
文・撮影=古関千恵子