なぜ雅子さまはレース使いを繰り返されたか
これまでも雅子さまは、ファッションにレースを取り入れられることがありましたが、それは部分的に用いるだけで、レース素材の服がお好きなのだろうという印象でした。
皇室に入られて初めての宮中晩さん会は、1993年に開かれた東京サミット参加国の首脳を招いてのものでした。ロシアのエリツィン大統領(当時)と、アメリカのクリントン大統領(当時)の間に座られた雅子さまは、白と薄いピンクのレースを用いたトップスのドレスをお召しになり、ひと際華やかさを添えていました。
今年の春の園遊会でも、雅子さまはインナーにレースを合わせられており、エレガントさが際立っていました。
雅子さまは身長が高く、人目を引き付ける魅力をお持ちでいらっしゃるため、レースのお洋服もとてもお似合いになります。華奢で小柄な女性がレースの洋服を着ると、ロマンティックな印象になりがちですが、雅子さまはスタイリッシュに着こなされ、レースの豪華さに負けない存在感をもともとお持ちなのだと感じさせます。
海外にも、レースを使った装いで世界中を魅了した女性たちがいます。
モナコ公妃になったグレース・ケリーは結婚式の時、レースをふんだんに使ったドレスで気品あふれる美しさを放っていました。
オードリー・ヘプバーンも映画『ローマの休日』で、レースのドレスやお洋服を着ていました。透き通るような花の文様が多いレースは、高貴な王侯貴族の象徴とされてきたのです。
たくさんのレースを用いたファッションは、そこにたたずむだけでエレガントなオーラを発する女性でなければ着こなせないものです。そうした意味でも、雅子さまならばレースの持つ強い主張に負けることはないでしょう。
ただ今回のイギリスご訪問中のように、雅子さまがレースをあしらったお洋服を何パターンも続けて着ていらっしゃったのは、今まで見たことがありません。
なぜ、ずっとレースを身にまとい続けていらっしゃったのでしょうか。実はそこに、レースにまつわるイギリスの歴史が隠されているのです。
2024.07.25(木)
文=つげのり子