この記事の連載
- 光石研さんと北九州、東京。 1/3
- 光石研さんと愛犬グリグリ 2/3
- 光石研さんと俳優 3/3
「子分気質だったから、荒い言葉を使ったことがない」
――北九州というと、『Helpless』や『共喰い』など、青山真治監督の映画で光石さんが演じられた役が話すような、荒々しい言葉のイメージがあったので、意外でした。お母様から「荒っぽい言葉を使っちゃダメよ」と言われていたのですか?
覚えてないです。ただ、子供の頃から体も小さかったし、クラスの女子からも「研!」と呼び捨てされていて、基本的に子分気質だったから、「おめえ」だとか荒っぽい言葉を使ったことがないんですよね。部活の後輩にふざけて言うことはあっても、元来そういうタイプではなかったですね。
――北九州の人はどういう気質だと思いますか?
とにかく興奮症と言いますか、すぐカッとなったり、集まるとすごいテンションになったりします。同窓会に行くと63歳にもなろうという連中が、顔を真っ赤にして喋っていますから(笑)。周囲を楽しませようという気遣いもありますし、情け深いところもある。土の匂いを感じますね。
――光石さんは温和な印象ですが、カッとなることもあるのですか?
滅多に出ませんが、カチンときたときにはね(笑)。リバーサイドボーイズのみんなもそういうところはありますよ。あの4人で集まった時に一番テンション高いのは、僕かもしれないです。嬉しくなっちゃうので(笑)。
――同郷ならではの、気を使わずに済む空気感があるのでしょうか。
地元にいた年代は違うし、3人とも東京に出てから知り合ったんですけどね。でもあの街に僕が18までいたことをみんなが知っているというのは、どんなにカッコつけても見透かされているような気がするんですよね。だから、でんでんさんや浩介くん、野間口くんとは最初から腹を割って付き合えたんだと思います。
――逆に、普段東京にいるときには鎧をつけているような感覚があるのですか?
東京に住んで40年以上になって、だいぶなくなってきていますが、やっぱりありますよ。この街には仕事をしにきているという感覚がありますね。
東京の人やシティボーイに憧れますし、敵わないなと思います。
2024.07.06(土)
文=黒瀬朋子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=大島千穂