こんにちは、“おじさん俳優”好きのドラマウォッチャーのMです。春ドラマが佳境に入っていますが、皆さんはどのドラマにハマっていますか?

 今期はおじさんがグループ単位で登場するドラマは少ないのですが(『特捜9 season7』くらい?)、代わりに、主人公をさすがの演技力やいぶし銀の魅力で支えるおじさん俳優は登場しています。

 そこで、今期注目したいおじキャラと、演じる俳優たち3人を厳選してご紹介します。ちなみに、このコーナーでは “おじさん俳優”を、40歳以上と勝手に定義してます。


◆『アンメット ある脳外科医の日記』の井浦 新

まろやかな空気感の中に時折ピリリと不穏さが!

 井浦 新さん(以下敬称略)の快進撃が止まらない!

 2024年になってからだけでも、まず『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)での、切ない過去を持ち、でもちょっととぼけた元公安警察役。相棒の三浦翔平とのやり取りでファンをキュンキュンさせました。また大河ドラマ『光る君へ』(NHK)では、要職についたとたん一族のことしか考えなくなり、民を見殺しにする独裁者を演じ、憎まれ役のまま先日見事に退場されました。

 そして4月からは、杉咲 花さん(以下敬称略)が“記憶障害を抱える脳外科医”という難役を演じている、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)に出演しています。

 彼の役は、主人公・川内ミヤビ(杉咲 花)の古くからの知り合いで主治医でもある脳外科教授・大迫紘一。彼女が記憶障害になったあとも支えになり、彼女の脳の状態を診断し、病院で働くためのサポートをしています。

 柔和な人柄で部下に慕われ、教授室は大好きな観葉植物であふれているという人物で(拾ってきたり、知人から押し付けられたりしているらしい)、ミヤビをまろやかな笑顔で温かく見守る恩師として登場しました。過去にミヤビの母親も救っていたことも判明。

 ……が、彼の役がそんな、単なる“見守りあしながおじさん”なだけ、のハズがない、と疑いながら見ていたところ、第3話のラストで、ミヤビの脳の状態についてウソをついていたのかも!? という疑惑が浮上。さらに第4話では、ミヤビの脳を改めて検査し、疑問を持った三瓶先生(若葉竜也)の、カルテを見たいという要望をかたくなに拒否。しかもどうやら意図してミヤビの記憶が戻らないようにしているらしい、という衝撃の描写が。やっぱり……!

 ただ今の段階では、なぜそんなことをしているのかはまったく不明なので、もしかしたらミヤビのために、といった事情があるのかもしれません。そんな風に勘ぐってしまうのも、井浦 新が一言で善人、悪人と言い難い複雑な内面を表現できる役者だからこそ、だと思います。

 井浦 新はいつの間にか、そんな多面的な顔を持つ役者になっていました。

 役者としてデビューした映画『ワンダフルライフ』から始まり、伝説の監督、若松孝二氏の作品に出演し、のちには若松孝二役を演じるなど(最新映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』でも、再び若松孝二役を演じています)、キャリアの途中までは主に映画に出演していたので、テレビドラマ、特に連ドラで頻繁に顔を見かけるようになったのは最近という印象が強い人も多いと思います。

 ドラマもかなりの本数に出演しているのですが、ここ数年だけでも、『アンナチュラル』(TBSテレビ系)の、乱暴な口調が新鮮だった法医解剖医の中堂 系役や、『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)での、病を抱える主人公の紅野真空(高畑充希)を受け入れ、彼女の癒しとなっていく医師・浅黄 朔の好演が記憶にあります。

 バカリズム脚本で彼とコンビを組む『殺意の道程』(WOWOW)は、無念の自殺を遂げた父親の復讐のために殺人計画を練るという、通常ならシリアス一辺倒になりそうなストーリーなのに、その準備のプロセスがどんどんコメディになっていくというふざけた展開で、ふたりが普通の会話をしているだけなのに面白くなる、間の絶妙さは最高でした。こんなのもできるんだ、と驚きました。

 そして一気にファンを倍増させたのは、吉高由里子主演のドラマ『最愛』(TBSテレビ系)。彼が演じたのは、吉高演じる朝宮梨央が社長を務める会社の、法務部所属の弁護士・加瀬賢一郎。彼女を私設秘書のように献身的に支え、武闘派ではないけれど最後まで守りぬこうとする姿が、多くのファンを泣かせました。

 と、元々コアなファンではない筆者が、彼が演じたキャラクターは鮮やかにすぐ思い出せる。どのキャラクターも心に残っている。それってやっぱり、彼の演技が素晴らしいからなのだと思います。

 筆者の勝手な感想ですが、井浦 新には、彼だけの時間軸で時が流れているような印象があります。他の人と少し違うリズムを感じる。だからどうしても目で追ってしまい、気にかかり、ドラマが回を重ねるごとに、どんどん彼のキャラにハマっていってしまうことが多いのです(とはいえ、現代劇のリズムに合っていないというわけではありません)。

 『アンメット』の大迫教授も、第1話では優しげなただの脇役ですよ、の顔をしていましたが、回を追うごとに本心では何を考えているのかがわからなくなる一方。

 主人公・ミヤビの救いとなるのか倒すべき敵となるのか。ハラハラしながら見届けたいと思います。

『アンメット ある脳外科医の日記』

毎週月曜22時放送(カンテレ・フジテレビ系)
https://www.ktv.jp/unmet/
X:https://twitter.com/unmet_ktv
最新話無料配信中:https://tver.jp/series/srwy1lb14d

2024.05.13(月)
文=斎藤真知子