閉経は店じまいのようなもの
──「本格的な更年期がやって来る前に“やっとこっかな”と思っていることがいくつかある」と描かれていました。その後、実際に取り組んだことはありますか?
一人旅にチャレンジして、その面白さを知りました。私は人見知りだったこともあって、それまではなかなかハードルが高かったんです。山脇りこさんの『50歳からのごきげんひとり旅』を読んだことが後押しになり、さらに友人と台湾に行った際に見かけた「マジョリカタイル」というかわいいタイルの色付け体験に参加したくて思い切ってワークショップが開催された神戸まで、1人で行ってみました。京都まで足を延ばして、マジョリカタイルが貼ってある古い銭湯にも寄ってみたりして。
──不安よりも、楽しさが勝りましたか?
はい。知らない人に何かを尋ねるのも、1人で食事するのも、全然平気でしたね。気持ちが自由になる旅でした。昨年『人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました』という本を描いたんですが、私は「自分は人見知り」と、自分に暗示をかけていた部分もあったのかなって。思い切って人見知りを名乗るのをやめたら、思いのほか楽チンだったんです。神戸で出会った人におすすめの食べ物を教えてもらって、美味しいお豆腐に出会えて、それを『CREA』の夏の贈り物特集でも紹介させていただきました(笑)。いろいろな出会いが嬉しかったですね。
──更年期と聞くと、多くの方は不安に襲われてしまうと思うんですが、わたなべさんは自分をアップデートする、新しくするきっかけだと捉えていらっしゃるんですね。
私は子供の頃から、生理痛が重くて大変なほうだったんです。生理の日は2、3日寝込んでしまうことも多くて。だから「更年期になったらこれがなくなるんだ」と思ったら、「やっと店じまいできる」という期待感があったんですね。更年期は精神的なバランスやホルモンバランスが崩れるという話も聞きますが、個人的にはホッとしている部分が大きいかもしれません。
──読者に「これはやっておいてよかったよ」と伝えたいことがあれば教えてください。
私が今までに描いてきた中で一番思い入れがある本が『自分を好きになりたい。』なんです。誰しも子供の頃からのトラウマや、心に引っかかっていることがあると思うんですが、見て見ぬふりができているうちはいいんです。でも気にかかる部分があるんだとしたら、一度向き合って、自分の心を大切にする期間を設けてほしい。私はそれを経て、生まれ直せたなと思っていて。母との関係が良くなかったこともあって、ずっと「どうして自分は生まれてきたんだろう」という思いにとらわれていたんですが、自分がここにいる意味やありがたさを実感したら、すごく心が軽くなったんです。何か引っかかるものがある人は、改めて自分を見つめ直す時間を作ってみてほしいですね。
わたなべぽん
漫画家。山形県出身。累計50万部を突破した「やめてみた」シリーズや、自身のダイエット経験を綿密に描いた「スリム美人シリーズ」をはじめ、『自分を好きになりたい。』『人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました』『ダメな自分を認めたら部屋がキレイになりました』など著書多数。
X @ponwatanabe
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2024.06.21(金)
文=岸野恵加