編集部注目の書き手による単発エッセイ連載「DIARIES」。今回はお笑いコンビ・ランジャタイの伊藤幸司さん。音楽好きとして知られる伊藤さんですが、なかでも「の子」さん率いるロックバンド・神聖かまってちゃんへの思い入れは格別だとか。この場を借りて、伊藤さんから神聖かまってちゃんにラブレターを送ります。

 神聖かまってちゃん存在してくれてありがとう。
 僕は今「ロックンロールは鳴り止まないっ」を無限ループで聴きながらこれを書いています。

 真っ黒で気持ち悪い卵な僕は、気持ち悪いって何回言われたんだろ。
 クラスで醜い異臭を放って、フォークダンスで女子全員から手を繋ぐふりをされて、僕はもうどうにもならないだろうねと思ってたころに、1242を受信してみると、ナインティナインに出会いました。
 びばるげばる書店で松本人志の『遺書』を買いました。
 そんで東京NSCに入りました。
 でもろくに会話もできなくて、いつも友達ができない帰り道を過ごしていました。
 授業中に、「ここは仲良しクラブじゃねえんだぞ」とかいって狂ったりしてみたら、みんなが避ける中でぱちくり見ている国崎くんがいたから友達になりました。
 夏休みも来ずに中退したけど、僕よりもっと変な国崎くんとコンビを組んじゃった。
 いかれたNeetのまま、SMA HEET PROJECTに履歴書を送って面接に行ってそのまま所属になりました。
 その頃、よく国崎くんの家に遊びに行っていた。
 好きな漫画を教え合ったり、初恋の人のことを話したり、学生時代のことを話したり、好きなテレビを話したり、お父さんのことを話したり、お母さんのことを話したり、妹のことを話したり、いないお兄ちゃんとお姉ちゃんと弟のことを話したり、今年のM-1で誰が面白かったか話したり、今までのお互いの人生をすり合わせ練り合わせ溶け込ませるようにたくさん喋った。
 すり鉢の前で棒を手に、ごりごり、がりがり。
 がりがり、ごりごり。
 どんなふたりになるだろう。
 ズッ友でいられるかな。
 ワクワク、ワクワク。
 カエルの鳴き袋に、コウモリの牙、タイコウチのめだまにライオンのたてがみ、あと魔法の粉も入れちゃお。
 フフフふふ。
 鍋に入れてぐつぐつ、グツグツ。
 爆発しないように気をつけないと、、
 みちなるほうにいけるかな。
 どこまでもどこまでも上に上に上にいけるかな。
 すごいのができますように。

 ノスタルジー。

 コンビ組むって決めて、ちんちんポクポクとコンビ名を考えて、コンビ名を提案しようと決めて国崎くんの家にいった日。
 「ランジャタイってどうだろ?」
 「なんやそれ! ええやん! それにしよー!」
 「ほんと?よかった。あの、辞書をぱかっと開いてたまたま目に入った単語がそれなんだけど、、」
 本当は考えに考えて、『蘭奢待』という天下人だけが切り取ることを許される天下取りの香木の名前をいただいたすごい名前で、それは「天下とる!」という一世一代の決意表明だったのだけども、恥ずかしくてそこまで言えなかった。
 天下を取るなんて、当たり前だのクラッカー。
 知恵が溢れて止まらない。
 日本中に、あるてぃめっとレイザーをぶっ放したかった。(国崎くんはその後数年間、自分達のコンビ名のことを「ランジャイタイ」と思っていたらしい。)(そう思ってたっていうのもボケかもしれない。)

 前置きが長くなりました。
 神聖かまってちゃんのことを書こうと思ったら、結成当初の思い出がとめどなく駆け巡るのです。
 同じ1985年生まれだし、きっと18歳までおんなじ景色を見ながら生きてきたんだろうなと勝手に思っちゃってるしで、ライバルというか、芸人になってからの人生を共に歩んできたような感覚なのです。

 めっちゃいい曲あるよ!
 もう寝ようとしてた時、国崎くんにイヤホンを渡される。

 国崎くんが出してくれた毛布の上で、男の子にも女の子にもなれない僕は、女の子座りをしたまま、イヤホンを受け取る。
 そういえば幼稚園の頃から、ゆーれい未満で手はお菊さんみたいにうらめしや、足は女の子座りでいじめられたっけなあ。
 努力じゃどうにもならないことはある。
 生まれた時からその形なんだから。
 無理やり変えられないし変えたってしょうがないよ。
 どうしようもないだろうしどうにもならないだろうね。
 なんでこんなんなんだろ。
 死ねって毎日思ってたな。
 お父さんはなんでもかんでも僕を全否定してずっと怒ってくるし。
 あーあ。
 僕も死ね。

 おそるおそるニコニコ動画の再生ボタンを押した。
 真夜中に、ピアノの音が大音量で流れてくる。
 そのまま動けなくなった。
 全身の毛穴という毛穴にポイフルが入るんじゃないかってくらいガパッと開いた。
 好き。
 目も口も毛穴も開きっぱなしだった。
 脳が無限ハメコンボでひっくり返されっぱなし。
 どっちが表か裏か右脳左脳ももうわかんない。
 映像の中のの子ちゃんのぱちくりした目とずっと目が合っていた。
 放心状態。
 なんなんですかこれは。
 目を閉じて寝ようとしても、なんでだ全然鳴り止まねえ。
 もうだめだ。
 この人好き。
 心の奥まで完全にちりとられてしまった。
 ちばぎんどこいくの。

2024.04.24(水)
文=伊藤幸司