この記事の連載
- 橋本愛インタビュー #1
- 橋本愛インタビュー #2
監督のストライクゾーンを狙い続けた
――橋本さん自身が沙苗に対して共感したことはありますか?
橋本 実は、共感する部分はまったくなかったんです。どうしようかと思うほど、自分から遠い存在でした。沙苗に追いつけるか不安だったのですが、最終的には同じ目線に立って、同じ景色を見ることができたと思います。
――どういう景色だったのでしょう。
橋本 「これが正しい愛だ」と信じる気持ちの強さが共鳴した、と思いました。沙苗は出所後も定期的に精神科医の元を訪ねています。その中で夫の健太との愛を「こういうほのぼのとしたのを愛と認めちゃってむなしくも、悲しくもないのかな」と語ります。沙苗のその言葉が、すんなり入ってきたんです。
沙苗は、自分の信じる愛が社会的には狂気とみなされることに苦しんできた人なのです。でも彼女と同じ目線に立った時に、「世間から狂気とみなされているけれど、私は正気。正気とみなされている周りの人が狂気に見える」と景色が反転した瞬間がありました。その時、心から彼女を抱きしめたい気持ちになりました。
――精神科医と会話する際のセリフはドキッとするものがありました。撮影中、監督からの指示は多かったんですか?
橋本 「こう動いてほしい」という細かなものはなくて、ニュアンスの指示でした。だから監督のイメージする形、色、質感という微妙な違いを、時間をかけて汲み取りました。
監督に「ばっちりです」とおっしゃっていただけるまで、何回もテイクを重ねたので、一発OKは一度もなかったんです。けれど、何度も演じるのは好きだから楽しい時間でした。針の穴を通すように、狭いストライクゾーンを狙い続けました。
橋本愛(はしもと・あい)
1996年1月12日生まれ。熊本県出身。2010年、映画『告白』に出演し注目を集める。2013年、映画『桐島、部活やめるってよ』などで第36回日本アカデミー賞新人俳優賞ほかを受賞。テレビドラマや映画に多数出演する。女優業のほか、週刊文春の『橋本愛 私の読書日記』をはじめ、ファッションや写真の連載なども持ち、幅広く活躍中。
『熱のあとに』
2024年2月2日(金)、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国ロードショー!
橋本愛 仲野太賀 木竜麻生 坂井真紀 木野 花 鳴海 唯/水上恒司
監督:山本 英
脚本:イ・ナウォン
プロデューサー:山本晃久
製作:ねこじゃらし、ビターズ・エンド、日月舎
制作プロダクション:日月舎
英題:After the Fever
配給:ビターズ・エンド
2024/日本/カラー/5.1ch/ヨーロピアンビスタ/DCP/127分【PG12】
【公式リンク】
https://after-the-fever.com/
X(旧Twitter)@After_the_Fever
ヘア:夛田恵子
メイク:NOBUKO MAEKAWA
スタイリスト:清水奈緒美
【衣装クレジット】
ドレス 319,000円
中に着たトップ 30,800円/タナカ ダイスケ
https://tanakadaisuke.jp/
2024.01.26(金)
文=ゆきどっぐ
撮影=平松市聖