この記事の連載

 愛ゆえにホスト・隼人(水上恒司)を刺し殺そうとした沙苗(橋本愛)。服役後、母(坂井真紀)が持ってきた見合い話を機に健太(仲野太賀)と結婚し穏やかな新婚生活を送るが、謎の隣人・足立(木竜麻生)と親しくなったことで沙苗の日常が崩れ始める。

 2024年2月2日(金)に公開予定の映画『熱のあとに』は、2019年の新宿ホスト殺人未遂事件からインスピレーションを受けた作品です。主演の橋本愛さんに、出演のきっかけや脚本に感じた思いをお聞きします。

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「自分の信じているものを守る強さ」がある

――映画『熱のあとに』は、製作決定前に山本英監督から手紙が届いたことがきっかけで出演されることになったそうですね。

橋本 そうなんです。配給も製作も決まっていない段階でお手紙をいただきました。「主役の沙苗を演じてほしい」と書いてあったんですが、監督と脚本家だけの状況でお話をいただくのは初めてで、「こんなことってあるんだ」と驚きました。

――配給が決まっていないということは、撮影できるかどうかわからない状態ということですか?

橋本 そうです。そんなに初期からお声掛けいただいたのがすごく嬉しくて、もう内容関係なく「やります!」って気持ちになりました。

――手紙にはどんなことが書いてあったんですか?

橋本 私から「自分の信じているものを守る強さを感じる」と書いてありました。監督は、私が発信する言葉や態度を見て、主人公の沙苗と通じるものを見つけてくださったんです。「私以上に私を見てくれている人がいるんだな」と感じました。

 私自身、「自分が信じているものを守るんだ」と強く思っていた時期があったので、演じる役に通じるのなら、嬉しいご縁だなと思いました。

――「自分が信じているものを守る」とは具体的にはどういうことなのでしょうか?

橋本 自分の好きなものとか、生き方、愛することを守ろうとするのに近いかもしれません。自分が自分であることを肯定して、「生きていてもいい」って思おうとしているんです。

 でも最近、「信じる」という言葉は、どこか疑う気持ちがあるから生まれてくるのではないかと思うようになりました。今は、「自分が信じているものを守るぞ」とことさらに強く思わないようになったのですが、信じていることにも気づかないくらい自分の好きなものや生き方を信じているし、疑ってもいないから。そういう健康な状態になったからなんだと思います。

2024.01.26(金)
文=ゆきどっぐ
撮影=平松市聖