京都の花街を舞台に、舞妓になるための修行をする少女たちの奮闘と日々の料理を描いたNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」は、是枝裕和が総合演出を務めた物語。共に青森から上京しながらも、舞妓の才能がなく、毎日のご飯を用意するまかないさんとして働くことになるキヨと、“百年にひとりの逸材”として将来を期待されるすみれ。支える側と支えられる側になった親友同士を、対照的に描いている。

 W主演を務める森七菜と出口夏希も、かなり対照的。高校時代に俳優デビューし、「お芝居に運命的なものを強く感じている」と熱く語る森に対し、これが初主演作となるモデル出身の出口夏希は、「オーディションを受けるまで、是枝さんの顔も知らなかった……」といたずらっぽく打ち明ける。

 ともに21歳。「共通の話題はあまりない」と笑いながらも、「“友達”を飛び越えたそれ以上の関係」と語る、若き才能に迫った。

自然体の演技など、七菜ちゃんからは学ぶことばかり

――おふたりは初共演ですが、それまで面識は?

 別の作品のオーディションで会ったことがあって、軽くあいさつをしたことがあるくらい。しっかりお互いを知ったのはオーディションが初めてでした。というか、私はオーディションで夏希ちゃんのことを、とにかく「不思議な存在だな」と思ったんです。だって、是枝さんの顔を知らなかったんですよ?

出口 あはは!

 そういうことをあっけらかんと言ってしまえるところが「あ、出口夏希だ!」って毎回思うんです(笑)。夏希ちゃんにしか出せない個性があるし、夏希ちゃんに会わないと満たされない感情があるんですよね。例えば一緒に歩いていて、ふと振り返った表情がすごくキレイだったり、ふとかけられた言葉が本当に心にくるものだったり。

 夏希ちゃんの前だとなにをしても無駄な気がして。現場でも予想を超えるものをいっぱいぶつけてきてくれたし、この作品で相棒を演じさせてもらえて、本当にうれしかったです。

出口 私も、七菜ちゃんがキヨでいてくれて本当によかったと思いました。

 なんか照れるね(笑)。

出口 七菜ちゃんとお芝居をしたことで、私も本当に刺激を受けたんです。テレビで見ていた元気で明るい森七菜像は元々あったんですけど、実際に会ったら「こんなに自然体でいる女優さんもいるんだ!」と思って。気さくに話しかけてくれて、心を開いてくれることに驚いたんです。

 七菜ちゃんを見て、マネしたい、見習いたいと思う部分もたくさんありました。同世代に対して“焦り”という感情を抱いたのも初めて。

 たとえば、劇中でキヨが愛宕山に登るシーンが出てくるのですが、撮影がお休みの日に、ひとりで登りに行ったと聞いて。「役に向き合うってそういうことなのか」と思ったし、学ぶことが多かったです。

2023.01.13(金)
文=松山梢
撮影=榎本麻美
スタイリスト=申谷弘美(森さん)、Shohei Kashima/W(出口さん)
ヘアメイク=宮本 愛/yosine.(森さん)、中山友恵(出口さん)