共通点はガサツなところ。一緒にいると気を遣わないでいられる

――撮影を通して、おふたりはどんな関係になれたと思いますか?

 ずっと連絡を取り合って、たくさん会っているわけじゃないんです。

出口 でも、「元気かな? 現場大変じゃないかな?」とふと思い出して、メールをしてみたり。

 撮影中はマイクもついているし、心の内やプライベートを全て語り合えたわけじゃないと思うんです。でも、最初の“友達”の期間をくぐり抜けてそれ以上の関係でいられている気がして。これからもっと仲良くなれると思うし、それがすごく楽しみです。

――共通の話題がないくらい対照的のようですが、似ているところは?

 ガサツなところ? 一緒にご飯を食べに行くときも、気を使わないでいられるんです。話が途切れないから、撮影中もきっと、うるさかっただろうな(笑)。

出口 一緒にいて違和感がないよね。

――劇中のすみれに対するキヨのように表に出るお仕事をしているおふたりにとって、支えてくれる存在といえば?

出口 家族や友達、事務所の人……私のことを心配して応援してくれる人全員です。このお仕事を始めてから、ひとつの作品にたくさんの人が動いていることを知ったんです。恥ずかしいくらい遅いけど、みんなに支えられて自分がいることを感じました。

 私は、作品を見てくれる人。もちろん、身近にいる人は信頼できるし、支えられているとは思います。でも見てくれる人って、気を使わずに意見を投げかけてくれる一番近い人だと思うんです。だからすごく信頼しているし、限度を超えなければ、どんなことを言ってもらっても構わないと思っています。誰に、どう届いているのかは、意識していますね。

――キヨは料理に、すみれは舞妓という、情熱を傾けられるものに出逢います。おふたりにとって、「出会ってしまった」と思えるものは?

 運命的なものを強く感じるほどのものは、お芝居くらいしかなくて。それ以外はなにも続けて来られなかったですから。最初はぼんやりとした気持ちで始めたものですけど、お芝居に対して強く「続けていきたい」という気持ちを持ったのは、坂元裕二さんの作品を見たとき。特に好きだなと感じた作品でいうと『カルテット』です。

 この業界に入って初めて、「私はこの人と仕事をしなければいけない」と直感しました。まだご一緒できたことがないけれど、そう思える作品を手がけてくださった坂元さんには感謝しかない。大きな夢を与えていただいたと思っています。

出口 私はまだ、出会ってしまったものはないかもしれないです。今、このお仕事をしていることも想像していなかったし、取材を受けることも予想できなかった。これからどんなことに出会えるんだろうって、楽しみです。

 夏希ちゃんはきっと、この作品に出会ったことで、お芝居のことを好きになってくれたんじゃないかなと勝手に思っていて。

出口 確かに、本当にこの作品でお芝居が好きになれたかもしれません。それまではお芝居というものを知らない状態だったし、正直、私には向いていないという思いが強かったんです。でも今回の撮影では、たくさんお芝居について考えたし、それがすごく楽しくて。お芝居をしている自分に初めて違和感がなくなった気がしました。

 撮影中にどんどん輝いていく夏希ちゃんを近くで見られたことが、私もうれしかったです。これからも夏希ちゃんのお芝居を、もっともっと見たいと思っています。

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森 七菜(もり・なな)

2001年8月31日生まれ、大分県出身。2016年に大分県でスカウトされる。2019年映画『天気の子』のヒロイン・天野陽菜役に抜擢され注目を浴びる。2020年連続テレビ小説『エール』、映画『ラストレター』、2021年『ライアー×ライアー』など話題作に続々出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞ほか、数々の賞を受賞。同年『この恋あたためますか』で連続ドラマ初主演。2023年には映画『君は放課後インソムニア』の公開を控えている。


出口夏希(でぐち・なつき)

2001年10月4日生まれ、中国出身。2018年、雑誌「Seventeen」のミスセブンティーン2018に選ばれ専属モデルに(2022年8月で卒業)。現在は、non-no専属モデルとして活躍。2019年放送の『ココア』では、ドラマ初出演にして初主演を務めた。2022年はドラマ『インバージョン』、『ばかやろうのキス』でヒロインとして出演。映画『沈黙のパレード』(「ガリレオ」シリーズ)など話題作への出演が相次いでいる。

Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」
1月12日(木)よりNetflixにて独占配信中

祇園の舞妓さんになることを夢見て、親友のすみれ(出口夏希)と共に故郷の青森を離れ、京都へやってきたキヨ(森七菜)。 舞妓さんたちが共同で生活する屋形に住み込み、鼓や舞などの稽古に励んでいたキヨだが、舞妓には向いていないから青森に帰るように、と言われてしまう。ところがある日、キヨがみんなのために作った親子丼が評判に。毎日のごはんを用意する「まかないさん」として、屋形で働くことになる。一方、すみれは京舞の才能を発揮し、「100年にひとりの逸材」として、由緒ある祇園の花街で名を馳せていく。

総合演出:是枝裕和
出演:森七菜、出口夏希、蒔田彩珠、松坂慶子、橋本愛、松岡茉優、常盤貴子ほか
https://www.story-inc.co.jp/makanai/

2023.01.13(金)
文=松山梢
撮影=榎本麻美
スタイリスト=申谷弘美(森さん)、Shohei Kashima/W(出口さん)
ヘアメイク=宮本 愛/yosine.(森さん)、中山友恵(出口さん)