NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』のアンコール放送が今朝(4月3日)よりBSプレミアムでスタートした(月~土あさ7時15分、日曜には1週分の再放送あり)。本放送(第1回は2013年4月1日)からちょうど10年を迎えたタイミングである。

『あまちゃん』は、これ以前にすでに『木更津キャッツアイ』や『タイガー&ドラゴン』など多くの人気ドラマを手がけていた脚本家・宮藤官九郎のオリジナル作品である。物語は、能年玲奈(現・のん)演じる地味で引っ込み思案な主人公・天野アキが、住んでいた東京から、母親の春子(小泉今日子)の郷里である岩手県北三陸にやって来たところから始まる。

 アキは、祖母・夏(宮本信子)の勧めで海女を始めるのだが、海女姿で地元を紹介した動画がネット上に掲載されたところ、思いがけず全国的に注目されてしまう。以来、アキは高校の同級生である親友の足立ユイ(橋本愛)とともに、ご当地アイドルとして地元のPRを担うことになる。

 このあと、アキは本格的にアイドルを目指して東京に出ると、プロデューサーの荒巻太一(古田新太)と女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に出会う。じつは荒巻と鈴鹿には、過去に春子とのあいだにある因縁があった。そんな事情もあって、アキは2人に翻弄されながら物語が進んでいくことになる。

なつかしの「80年代」ネタが満載だった

 劇中では、折に触れて春子が10代の頃に夢中になった80年代のヒット曲が登場したり、若き日の鈴鹿ひろ美の設定には、演じる薬師丸ひろ子のイメージが投影されていたりと、80年代の世相風俗がさまざまな形でとりあげられた。その一方で、鈴鹿ひろ美が80年代に主演映画の主題歌として歌った「潮騒のメモリー」など、オリジナルの楽曲もいくつか生まれた。この年の紅白歌合戦でも『あまちゃん』の特別編と称して、登場人物たちが再び総出演し、これらの楽曲が歌われた(なお、NHKオンデマンドなどでは現在、ドラマ本編とあわせてこの紅白の特別編も最終回に続く「第157回」として配信されている)。

2023.04.21(金)
文=近藤正高