のんとミー坊、共通項は「夢中になるものがある」こと

 本年3月に発売されたCREA 2022年春号『あたらしい暮らし 楽しい暮らし』の表紙を飾ってくれた、のんさん。

 この日の取材では、机に置かれた春号の表紙を懐かしそうに眺め、「青山の洒落た本屋さんに並んでいて、“ああ……!!”ってなりました(笑)。周りの人たちからの評判もすごくよくて、めちゃめちゃうれしかったです」と感想を伝えてくれた。

 そんな気さくで無邪気な横顔はデビュー当時から変わらないが、のんさんの表現の幅は、俳優・映画監督・あーちすとと、年を重ねるごとにどんどん広がっていった。

 俳優活動におけるのんさんの最新主演映画『さかなのこ』は、『横道世之介』や『子供はわかってあげない』などで知られる沖田修一監督が、さかなクンの自伝的エッセイを原作に、さかなクンとは似て異なる“ミー坊”の半生を描いた。

 のんさんはミー坊を、躍動感あふれるたたずまいと、くるくると変わる愛すべき表情で、しっかりと見せ切った。

 ミー坊が魚に出会い海洋世界に魅了されていくように、大好きなことを見つけて夢中になれることの愛おしさと輝きで胸がいっぱいになる本作は、様々なことに夢中になり形をなしているのんさんの今にも通じるよう。

 映画や表現への探求心や、幼い頃から受けた影響・そのルーツを、のんさんに前後篇でたっぷりとうかがった。

【後篇を読む】「黒い鬼を描いた! 格好いいぞ!」俳優・のんが語る“作ること”のルーツ


ミー坊はヒーローだと思えた

――『さかなのこ』で、のんさんは主人公のミー坊を演じています。映画の冒頭では、「男か女かは、どっちでもいい」とあり、ホン読みでもホワイトボードに同じように書いてあったと伺いました。込められた思いについて、のんさんも共鳴していますか?

 はい、そうですね。「どっちでもいい」という考え方には、すごく共鳴しました。

 ホン読みに行ったら、監督の手書きで「男か女かは、どっちでもいい」とホワイトボードに貼られていたので、「これは監督の格言ですか?何ですか?」と聞いたんです。そうしたら「ミー坊のことを考えていたらこの言葉が思い浮かんで、もうどっちでもいいんだ、って思って書いておきました」とおっしゃっていて。それで「私がミー坊をひとりのただの人間として演じていいんだ」とすごく安心しましたし、勇気ももらいました。それに今の時代にもすごく合っているというか、こういうキャスティングが実現したこと自体もうれしくて。

 あと……ミー坊の役をいただいたときに、ミー坊はヒーローだと思えたから、それもうれしかったんです。私自身、ヒーロー願望がすごく強くて、ヒーローをやりたいと思っていたので。性別が云々ではなく、物語の立ち位置としてヒーローポジションをやる、やりたいというのを大事にしていました。自分の好みでもあるし、のんという役者がそういうヒーロー的な立ち位置なのが魅力的だとも捉えていたんです。

2022.09.01(木)
文=赤山恭子
撮影=深野未季