沖田監督の集中力に乗っかって演技をしていた

――雰囲気作りで意識されていたこともあったんですか?

 え、あまりないかも。沖田組の現場がすごく心地よかったので、私も心がオープンになっていたんです。磯村さんとかも、私のことを本当に同級生の男子みたいな感じで接してくれて、「みんな違和感ないんだ」と思って受け入れて楽しむことができたので、男同士の友達みたいな空気が流れていた気がします。

――ミー坊ののんさんが皆さんの中にいても、びっくりするぐらい違和感がないですよね。

 そうですよね! 撮影の合間に、総長たちがバイクと記念写真を撮っていたんですよ。「あ、いいなー」と思って見ていたら、磯村さんが「ミー坊も来なよ! ミー坊も撮りたいでしょ!」みたいな感じで誘ってくれて、「え、撮りたいです!」と仲間に入れた感じも、すごくうれしかったですし。

 ……なんか、不良の方たちとはご縁があったんです。柳楽さんとはヨコハマ映画祭ですれ違ったことがあって、そのときに記念写真を撮ってもらったんですよ。柳楽さんがたぶんすずさん(『この世界の片隅に』)を観ていてくれたみたいで、「あ、のんだ」みたいに凝視してきて(笑)。「あっ」と思ったので「写真撮ってください」と言ったら、撮っていただけました。

 磯村さんは、コロナ禍で絵を描こうというような雑誌の特集があって、それぞれ違うページではあるんですけど、同じ特集内で絵を描いたんです。「絵を描く人なんだ」とそこで知りました。絵つながりで言うと、岡山(天音)さんとは、10代のときに月9の恋愛ドラマのいち生徒役で共演していたんです。当時、岡山さんは美術の高校に通われていたらしくて、落書きしていた絵がすごく格好良くて。そんなご縁が皆さんとあったので、今回ご一緒できて本当にうれしかったです。

――沖田監督とご一緒したことや本作に出演したことで、改めて気づいたこと、今後のご自身の監督業や俳優業に何か影響はありそうですか?

 監督がすごく純粋で、100%映画に向かっていた現場でした。監督が悩まれたり、「ああ、これいいなー」と笑っていらっしゃったりしている姿を見ていて、その集中力に乗っかって演技をすると、ミー坊が生き生きしてくるという素敵な現象があって。改めてこういう現場にいたいな、とすごく思いました。

» 場面写真やのんさんの写真を全てみる
» 【後篇につづく】「黒い鬼を描いた! 格好いいぞ!」俳優・のんが語る“作ること”のルーツ

のん

1993年7月13日生まれ、兵庫県出身。2016年にアニメ「この世界の片隅に」で主人公・すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭「審査員特別賞」を受賞。2017年に自ら代表を務める新レーベル『KAIWA(RE)CORD』を発足。2022年公開の主演映画『Ribbon』では自ら脚本・監督を務めた。

映画『さかなのこ』

9月1日(木)より TOHO シネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー

のん 柳楽優弥 夏帆 磯村勇斗 岡山天音
西村瑞季 宇野祥平 前原 滉 鈴木 拓 島崎遥香 賀屋壮也(かが屋)
朝倉あき 長谷川 忍(シソンヌ) 豊原功補
さかなクン 三宅弘城 井川 遥

監督・脚本:沖田修一 脚本:前田司郎
原作:さかなクン「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!~」(講談社刊)
音楽:パスカルズ 主題歌:CHAI「夢のはなし」(Sony Music Labels)
製作:『さかなのこ』製作委員会
制作・配給:東京テアトル
©2022「さかなのこ」製作委員会
http://sakananoko.jp/

2022.09.01(木)
文=赤山恭子
撮影=深野未季